アバンティアデース
Ἀβαντιάδης
Abantiades

概要

「アバースの末裔(男性)」くらいの意味。 この語はオウィディウスの「変身物語」に散見される。 そこではアクリシオスまたはペルセウスを指す語として使われている。

出自

アクリシオス

アバースの子。

ペルセウス

アクリシオスの孫。 ゼウスダナエーの子。

神話

引用

アクリシオスの例

オウィディウス,「変身物語」, 4.607-611

solus Abantiades ab origine cretus eadem
Acrisius superest, qui moenibus arceat urbis
Argolicae contraque deum derat arma genusque
non putet esse Iovis : neque enim Iovis esse putabat
Persea, quem pluvio Danae conceperat auro.
ただ、アルゴスアクリシオスだけが同調しなかった。 もとはバッコスと同じ一族から出ながら、この神をアルゴスの城壁から閉め出して、敵対の武器をとり、彼がユピテルの子であることを認めなかったのだ。 同じユピテルが黄金の雨となって忍び込み、わが娘ダナエに生ませた子であるペルセウスをも、アクリシオスは神の子であるとは認めないでいた。
(中村善也 訳)

ペルセウスの例

オウィディウス, 「変身物語」, 4.672-677

quam simul ad duras religatam bracchia cautes
vidit Abantiades, nisi quod levis aura capillos
moverat et tepido manabant lumina fletu,
marmoreum ratus esset opus ; trahit inscius ignes
et stupet et vidae correptus imagine formae
paene suas quatere est oblitus in aere pennas.
乙女が荒い岩に両腕をつながれているのが、ペルセウスの目にうつった。 そよ風が乙女の髪の毛をゆり動かし、その目が熱い涙であふれていなかったら、大理石の像だと思ったことだろう。 見るより早く、われ知らず彼の心は燃え上がった。 並はずれて美しい姿に呆然として、翼を空中にふり動かすのを忘れそうになったくらいだ。
(中村善也 訳)

オウィディウス, 「変身物語」, 5.137-143

torquet in hunc hastam calido de vulnere raptam
ultor Abantiades ; media quae nare recepta
cervice exacta est in partesque eminet ambas ;
dumque manum Fortuna iuvat, Clytiumque Claninque
matre satos una, deverso vulnere fudit :
nam Clytii per utrumque gravi librata lacerto
fraxinus acta femur, iaculum Clanis ore momordit.
この男への仕返しに、ペルセウスは、あたたかい傷口から引き抜いた槍を投げつける。 槍は、鼻の真ん中にあたって、首筋を貫き、前とうしろの両方に突き出る。 つづいて、ペルセウスは、クリュティオスクラニスを打ち倒した。 まだ「運命女神」の助けがあったのだ。 このふたりは、同じ母親の息子だが、受けた傷には違いがあった。 クリュティオスのほうは、力強い腕から振り投げられたとねりこの槍に両腿を貫かれたが、クラニスは投げ槍を口に受けて、それを歯でかじるはめとなったのだ。
(中村善也 訳)

改訂履歴