ミーレートス
Μίλητος
Miletos

名称のゆらぎ

カナ表記 ギリシア語表記 アルファベット表記 出典
ミーレートス Μίλητος Miletos アポロドーロス
アントニーヌス・リーベラーリス
アポローニオスへの古注
ミーレートゥス Miletus(羅) オウィディウス

概要

アポローンの子。 ミーレートス市の建設者。

出自

父親はアポローン。 母親はアレイアー。 (アポロドーロス, 3.1.2 ; アポローニオス「アルゴナウティカ」1.186への古注)

父親はアポローン。 母親はアカカリス。 (アントニーヌス・リーベラーリス, 30話)

父親はアポローン。 母親はデーイオーネー。 (オウィディウス, 「変身物語」, 9.440 ff)

アポローニオス「アルゴナイティカ」1.186への古注では、他の出自も紹介している。 父親のみの言及であり、母親に関する指摘はない。

神話

引用

アポローニオス「アルゴナウティカ」1.186への古注

Scholia ex Cod. Paris

(前略)

Τὸν δὲ Μίλητον, ἀφ᾽ οὗ καὶ ἡ πόλις ὠνομάσθη Μίλητος, οἱ μὲν ἐξ Ἀκτίου τοῦ Μίνωος γενέσθαι φασίν· οἱ δὲ Ἀπόλλωνος καὶ Ἀρείας τῆς Κλεόχου. Φησὶ γὰρ Ἀριστόκριτος, Ἀρείαν Κλεόχῳ γεγονέναι θυγατέρα· ἧς καὶ Ἀπολλωνος γενέσθαι βρέφος. Τοῦτο δὲ ἐκτραφῆναι ὑπὸ τῆς μητρὸς εἰς μίλακα. Κλεόχον δὲ ἐκεῖθεν ἀνελόμενον ὀνομάσαι Μίλητον. Τοῦτον δὲ ἀνδρωθέντα φθονηθῆναι ὑπὸ Μίνωος. Ἀναχωρήσας οὖν διὰ τὸν φθόνον ἐκειθεν ἀφικνεῖται εἰς Σάμον. Καὶ τόπος τίς ἐστιν ἐκεὶ ὑπ᾽ ἐκείνου καλούμενος Μίλητος. Ἐκεῖθεν εἰς Καρίαν ἀναχωρήσας, κτίζει πόλιν ἐκεῖ καλέσας ἀφ᾽ ἑαυτοῦ Μίλητον. Μαρτυρεῖ δὲ καὶ Ἡρόδοτος. Ἄλλοι δέ φασιν, Σαρπηδόνα τὸν Εὐρώπης καὶ Διὸς κτίσαι τὴν Μίλητον. Οἱ δέ φασιν, πρῶτον Πιτυοῦσαν καλουμένην, ἢ Ἄστερίαν καθ᾽ ἑτέρους, ἢ κατὰ ἄλλους Ἀνακτόριον, ὕστερον κληθῆναι Μίλητον.

(後略)

(前略)

ミーレートスという都市に名を与えたのはミーノースの子アクティオスの子ミーレートスであると言われる。 また一方でミーレートスはアポローンクレオコスの娘アレイアーの子ともいわれる。

なぜならアリストクリトスによれば、クレオコスアレイアーを娘として生んだと言われる。 このアレイアーに、アポローンが子を産ませた。 この子は少年時代を母の許で成長した。 その後クレオコスによって育てられ、ミーレートスと呼ばれた。 この子が成人すると、ミーノースが彼に嫉妬した。

事実、その嫉妬を避けてこの地から去り、サモスへと逃れた。 そしてその土地は、その人の名をとってミーレートスと呼ばれた。 そこから更にカーリアに退き、そこにポリスを建設し、彼自身の名をとってミーレートス名付けた。

他の何人かは、エウローペーゼウスの子サルペードーンによってミレートスが建設されたと言っている。 一方、更に他の人たちは、最初にピテュウーサと呼ばれ、更にアステリア、そしてアナクトリオスと呼ばれ、その後にミーレートスと呼ばれたと言っている。

(後略)
(仮訳 2017.3.6.)

Scholia Edita

V.186. Ὁ δὲ Μίλητος, ἀφ᾽ οὗ καὶ ἡ πόλις Μίλητος, Εὐξαντίου τοῦ Μίκωνος ἦν. Οἱ δέ φασιν αὐτὸν Ἀπόλλωνος καὶ Ἀρείας τῆς Κλεόχου. Ἐκλήθη δὲ Μίλητος, ὅτι ἐκρύβη ὑπὸ τῆς μητρὸς ἐν μίλακι. Οἱ δὲ φασιν ὑπὸ Σαρπηδόνος τοῦ Διὸς Μίλητον κτισθῆναι, ὀνομασθεῖσαν ἀπὸ τῆς ἐν Κρήτῃ. Ὀνομασθῆναι δὲ αὐτὴν πρῶτον λέγουσι Πιτυοῦσσαν, οἱ δὲ Ἀστερίαν, εἶτα Ἀνακτόριον, εἶτα Μίλητον. Καὶ Ἀριστόκριτος φησὶν, ὅτι Ἀρεία θυγάτηρ ἐγένετο Κλεόχου, ἧς καὶ Ἀπόλλωνος γενέσθαι βρέφος, καὶ τοῦτο ἐκτεθῆναι εἰς μίλακα. Τὸν δὲ Κλέοχον ἀνελέσθαι, καὶ ὀνομάσαι ἀπὸ τῆς μίλακος Μίλητον. Τοῦτον δὲ ἀνδρωθέντα, καὶ φθονούμενον ὑπὸ τοῦ Μίνωος, ἀναχωρῆσαι εἰς τὴν Σάμον· ἀφ᾽ οὗ καὶ τόπος ἐστι Μίλητος· καὶ ἀπὸ τῆς Σάμου μεταβὰς εἰς τὴν Καρίαν, ἔκτισε πόλιν, Μίλητον ἀφ᾽ ἑαυτοῦ καλέσας.

186行目 : ミーレートス市に名を与えたミーレートスは、ミコーンの子エウクサンティオスの子である。 ある人々は、ミーレートスをアポローンクレオコスの娘アレイアーとの子であるとしている。 子供はミーレートスと呼ばれ、幼少期は母によって隠された。 一方、ゼウスの子サルペードーンミーレートス市を建設し、クレータ島の都市から名付けたという人たちもいる。

この都市は、最初ピテュウーッサと呼ばれ、次にアステリア、更にアナクトリオス、そしてミーレートスとされた。

アリストクリトスによれば、アレイアークレオコスの娘として生まれ、アポローンによって身ごもり、幼い子を棄てた。 幼少期を過ぎると、ミーレートスをクレオコスが育てた。

ミーレートスが成人すると、ミーノースの嫉妬を受け、サモス島へ退いた。 その上陸した場所はミーレートスである。 更にサモスからカーリアに退き、ポリスを建設し、建設者の名前に因んでミーレートスとした。
(仮訳 2017.3.11.)

仮訳の問題点

高津春繁「ギリシア・ローマ神話辞典」岩波書店のミーレートスの項目には、上記古注から書かれたと思われる記述がある。 それは

さらに他伝では彼の母はクレオコスKleochosの娘アレイアーAreiaで、母に棄てられ、クレオコスに拾われた。 その美貌のためにミーノースに犯されんとして、サモスSamosに遁れ、ここにミーレートス市を建ててのち、カーリアにあった同名の後代の市を築いた。

とあるのだが、現在の私の読解能力では、そのようには読めていない。 ミーレートスがミーノースから求愛のアプローチを受けたように読めていないのだ。

Scholia Ex Cod. Parisで使われている語句φθονηθῆναιφθονέωのアオリスト/受動態/不定詞。 Scholia Editaに使われている語句φθονούμενονは、やはりφθονέωの現在分詞/受動態または中動態/男性/単数/対格で、このφθονέωという語は「悪意を持つ」や「嫉妬する」を意味する言葉であり、強引に肉体的な接触などを含むアプローチを意図する感情に基くアクションとは読めなかった。 この部分に関しては、私自身がオウィディウスの内容に引きずられていることも、認めざるを得ない。

これは、私の読解能力に問題があってそう読めていない(その可能性は非常に高い)のか、高津がアポロドーロスやアントニーヌス・リーベラーリスの記述に引っ張られてしまっているのか、もっと別の資料を参照しているのか、という可能性がある。
(2017.3.10.)

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