ニュクス
Νύξ
Nux

概要

夜を擬人化した女神。 ヘーシオドス『神統記』ではエレボスと共に原初の存在カオスから生まれた神。

出自

ヘーシオドスの『神統記』ではエレボスと共に原初の存在カオスから生まれた神とされている。

アリストパネースの喜劇『鳥』には、鳥たちからなるコロス(合唱隊)が世界創造のくだりを歌う(アリストパネース, 『鳥』, 693行以降)場面がある。 それによると、ニュクスは原初の存在カオスから生じ、一人で卵を産み、その卵からエロースが生まれることで世界が創造されていったとされる。

太初(はじめ)混沌(カオス)があった、 それに夜とくらい幽冥(くらやみ)とそれから広い黄泉(よみ)とが。 その幽冥の果てしのない懐ろにか黒の翼の夜が、一人でもって卵を産んだ。 その中から時たち月満ちて、いとしなつかしい(エロス)が生まれ出た。 その(せな)は金色の羽根に輝いて、疾風(はやて)の渦巻にしも異ならなかった。 これが闊やかな黄泉でもって、暗澹として翼をもたる混沌(カオス)に通いわれわれのやからを育み(かえ)し、まず最初に光明に接せしめたのだ、その愛があらゆるものを交わらせた前には、不死の(神々の)やからもまだなかった。 それがてんでんに交わりあって、蒼穹も大洋も大地もさきわう神々の、常磐(とこわ)なるやからも生じたのだ、それゆえわしらはあらゆる(さき)わえる神々よりも年長なのだ。
(呉 茂一 訳)

神話


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