オクノス
Ὄκνος
Oknos
Ocnus(羅)

概要

恐妻家の男。 彼は勤勉な男性であったが、妻(名前は不明)は浪費家であった。 冥界で彼は細紐を編んでいるが、そばに立っている雌ロバが編み上げた端から食べてしまう。 (パウサニアース「ギリシア案内記」10.29.1) プリーニウスによれば、これは箒の縄であるという。 (プリーニウス「博物誌」35.137)

パウサニアースによると、デルポイの会堂にオデュッセウスが冥界に降ったときの様子を描いた壁面が、当時あったという。 パウサニアースは、このオクノスの描かれた絵の部分は、オクノスの妻のことを暗に表現している、としている。 (パウサニアース「ギリシア案内記」10.29.2)

プリーニウスの訳本ではオクノスの名前に「怠惰者」という注釈をつけている。 (プリーニウス「博物誌」35.137) それゆえに、ラテン語で「怠け者が縄を綯(な)う=無駄な努力」(ocnus spartum torquens.)なる諺があるという。 雄山閣の訳本Loebの英訳からの重訳であり、この部分の訳はH. Rackham翻訳によるLoebの記述によっている。

ギリシア語の辞書にはὄκνοςという語にshrinkingとかhesitationといった訳語がリストされている。 少し古いLiddell & Scottの第7版に準拠した中約版では、unreadinessとかsluggishnessといった訳語も出ており、こういった訳語から動作の遅い、躊躇いの多い=怠け者といったニュアンスが生まれたのかもしれない。

出自

不明

神話

上記概要に述べた以上のことはないようです。

ウェルギリウスの「アエネーイス」には、オクノスをラテン語化したオクヌスという人物が登場する。 (ウェルギリウス「アエネーイス」10.198以降) しかし彼は女預言者マントーの子でマントゥア市の建設者とされており、上記オクノスとは関係なく、アウクヌスとして知られる人物と同一と思われる。


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