書名 | ちょっとだけ古典ギリシア語でギリシア神話を読んでみる本 |
著者 | きむら ともる |
「早わかりギリシア神話」を書いていたときのフラストレーションの一つは、ギリシア語がタイプセットできなかったことです。 これは、入稿用の組版システムの仕様によります。 当時は、文字コードにShift-JISを基本としたものでした。
私のギリシア語習得が遅々として進まないでいたとき(って、今でもロクに読めませんが)、フリーのデータでギリシア語の活用形から引ける辞書データがあることを知りました。 これがあれば?? 活用形を覚えきれずに足踏みしていたものが進むのでは?? 淡い期待が広がります。
選んだテキストは、オルペウスの讃歌にしました。 これは、本当に「何となく」選んだものです。 ホメーロスやヘーシオドス、三大悲劇詩人による悲劇などは、すでに翻訳があります。 もっとマイナーで、あまり翻訳を見かけないものとして選んだのが、オルペウスの讃歌でした。
「早わかりギリシア神話」を書いているとき、すでにThomas Taylorによる英訳は入手していました。 しかし、彼の訳は約200年前のもの。 固有名詞も英訳されており、非常に理解が難しいものでした。 そんなこんなでウダウダしていたとき、古い原書をスキャンしたものがAmazonで入手できることがわかりました。 データだけであれば、American Librariesにもあることを知ったのは、ずいぶん後のことです。
一番最初のムーサイオスへの讃歌は長かったので、次のプロテュライアへの讃歌を読んでみたら、何とか読めました。 そしてこのプロセスをシェアすることは、私と同じように独学でギリシア神話を読み進めている人に、わずかでも益することがあるのではないか、と考えてまとめたものです。
原文の本文長さは10行程度が適当であろうと思っていました。 あまり長いものでは読んでいてウンザリしてしまいますし、あまり短いものでは2,3語呼びかけて終わってしまうからです。 そのような観点から本文を見ていたとき、ウーラノスへの讃歌が9行であり、神格としても馴染みのあるものなので適当であろう、として選びました。
本文にフォントデータを埋め込んでいます。 ですから、root化してフォントを追加していない、普通のタブレットやスマートフォンでもギリシア語を表示します。 ただし、文字のスペーシングなどはヒドいものです。 ソースコードではちゃんと単語ごとにスペースを入れているので、これはKindleアプリの現在での仕様、というように理解しています。