練習 3.5

課題文

ἡ Αἴγυπτος δῶρον τοῦ Νείλου ποταμοῦ.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
定冠詞 女性/単数/主格 Αἴγυπτοςにかかる
Αἴγυπτος Αἴγυπτος 女性名詞 単数/主格 アイギュプトス(エジプト)(国名)
δῶρον δῶρον 中性名詞 単数/主格 贈り物
τοῦ 定冠詞 男性/単数/属格 Νείλουにかかる
Νείλου Νεῖλος 男性名詞 単数/属格 ネイロス(ナイル)(川名)
ποταμοῦ ποταμός 男性名詞 単数/属格

脚注

特になし。

出典と翻訳

ヘーロドトス, 『歴史』, 2.5

καὶ εὖ μοι ἐδόκεον λέγειν περὶ τῆς χώρης: δῆλα γὰρ δὴ καὶ μὴ προακούσαντι ἰδόντι δέ, ὅστις γε σύνεσιν ἔχει, ὅτι Αἴγυπτος, ἐς τὴν Ἕλληνες ναυτίλλονται, ἐστὶ Αἰγυπτίοισι ἐπίκτητός τε γῆ καὶ δῶρον τοῦ ποταμοῦ, καὶ τὰ κατύπερθε ἔτι τῆς λίμνης ταύτης μέχρι τριῶν ἡμερέων πλόου, τῆς πέρι ἐκεῖνοι οὐδὲν ἔτι τοιόνδε ἔλεγον, ἔστι δὲ ἕτερον τοιόνδε.

エジプトの国土に関する彼らの話はもっともであると私にも思われた。 というのは、いやしくも物の解る者ならば、たとえ予備知識を持たずとも一見すれば明らかなことではあるが、今日ギリシア人が通航しているエジプトの地域は、いわば(ナイル)河の賜物ともいうべきもので、エジプト人にとっては新しく獲得した土地なのである。 それのみならず、モイリス湖の上方(南方)遡行三日間に及び地域もまた—祭司たちの話はこの地方までは及んでいないが—、前述の地方と同様な例といってよい。
(松平千秋 訳)

メモ

基本構造はΑἴγυπτοςδῶρονである、というもの。 ではどんなδῶρονかというと、τοῦ Νείλου ποταμοῦがかかってくる。 つまり、「ΑἴγυπτοςΝεῖλος ποταμόςδῶρονである」、というのが文意。

有名な言葉なので、知っている人も多いのではないでしょうか。

Αἴγυπτοςは単数/主格の語尾が-οςで終わっているけれども、女性名詞。 他に道を意味するὁδόςなど、語尾が-οςで終わる女性名詞は、数が多くないとはいえ存在する。 特に、乙女を意味するπαρθένοςの単数/主格での語尾が-οςだからって、男性名詞だったらイヤですよね??

男性/単数/属格の定冠詞τοῦΝείλουποταμοῦのどちらにかかるかは、出典の記述を見るとΝείλουという属格が限定的位置を取った形容詞のように(属格はそのようを位置をとることが少なくない)ποταμοῦにかかっていると考えるのが適切であるように思われる。 つまり「Νεῖλοςなるποταμόςの」と読むことになる。

有名な日本語の表現に引っ張られて、ποταμοῦを形容詞的に「ποταμόςであるΝεῖλοςの」と読んでΝείλουにかかる、と解することも可能。

とはいえ、Νεῖλοςποταμόςは同じものなので、どちらで読んでも日本語にすると違いがあまり感じられないように思う。


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