練習 9.10

課題文

κλεπτῶν γὰρ ἡ νύξ, τῆς δ᾿ ἀλθηείας τὸ φῶς.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
κλεπτῶν κλέπτης 男性名詞 複数/属格 盗人
γάρ γάρ 小辞 この語は変化しない なぜなら
定冠詞 女性/単数/主格 νύξにかかる
νύξ νύξ 女性名詞 単数/主格
τῆς 定冠詞 単数/属格 ἀληθείαςにかかる
δέ δέ 小辞 この語は変化しない そして
ἀληθείας ἀλήθεια 女性名詞 単数/属格 真実
τό 定冠詞 中性/単数/主格 φῶςにかかる
φῶς φῶς 中性名詞 単数/主格

脚注

2つの属格はいずれも「~のもの」の意, ἐστίを補って考える。

出典と翻訳

不明。

ただし、これと同じ文はエウリーピデース, タウリケーのイーピゲネイア, 1026行目にオレステースのセリフで出て来る。

Ἰφιγένεια

πῶς οὖν γένοιτ᾽ ἂν ὥστε μήθ᾽ ἡμᾶς θανεῖν,
λαβεῖν θ᾽ ἃ βουλόμεσθα; τῇδε γὰρ νοσεῖ
νόστος πρὸς οἴκους: ἡ δὲ βούλησις πάρα.

Ὀρέστης

1020ἆρ᾽ ἂν τύραννον διολέσαι δυναίμεθ᾽ ἄν;

Ἰφιγένεια

δεινὸν τόδ᾽ εἶπας, ξενοφονεῖν ἐπήλυδας.

Ὀρέστης

ἀλλ᾽, εἰ σὲ σώσει κἀμέ, κινδυνευτέον.

Ἰφιγένεια

οὐκ ἂν δυναίμην: τὸ δὲ πρόθυμον ᾔνεσα.

Ὀρέστης

τί δ᾽, εἴ με ναῷ τῷδε κρύψειας λάθρα;

Ἰφιγένεια

1025ὡς δὴ σκότον λαβόντες ἐκσωθεῖμεν ἄν;

Ὀρέστης

κλεπτῶν γὰρ ἡ νύξ, τῆς δ᾽ ἀληθείας τὸ φῶς.

Ἰφιγένεια

εἴσ᾽ ἔνδον ἱεροὶ φύλακες, οὓς οὐ λήσομεν.

Ὀρέστης

οἴμοι, διεφθάρμεσθα: πῶς σωθεῖμεν ἄν;

Ἰφιγένεια

ἔχειν δοκῶ μοι καινὸν ἐξεύρημά τι.

Ὀρέστης

1030ποῖόν τι; δόξης μετάδος, ὡς κἀγὼ μάθω.

Ἰφιγένεια

ταῖς σαῖς ἀνίαις χρήσομαι σοφίσμασι.

Ὀρέστης

δειναὶ γὰρ αἱ γυναῖκες εὑρίσκειν τέχνας.

Ἰφιγένεια

φονέα σε φήσω μητρὸς ἐξ Ἄργους μολεῖν.

Ὀρέστης

χρῆσαι κακοῖσι τοῖς ἐμοῖς, εἰ κερδανεῖς.

Ἰφιγένεια

1035ὡς οὐ θέμις γε λέξομεν θύειν θεᾷ,

Ὀρέστης

τίν᾽ αἰτίαν ἔχουσ᾽; ὑποπτεύω τι γάρ.

Ἰφιγένεια

οὐ καθαρὸν ὄντα: τὸ δ᾽ ὅσιον δώσω φόβῳ.

Ὀρέστης

τί δῆτα μᾶλλον θεᾶς ἄγαλμ᾽ ἁλίσκεται;

Ἰφιγένεια

πόντου σε πηγαῖς ἁγνίσαι βουλήσομαι,

Ὀρέστης

1040ἔτ᾽ ἐν δόμοισι βρέτας, ἐφ᾽ ᾧ πεπλεύκαμεν.

Ἰφιγένεια

κἀκεῖνο νίψαι, σοῦ θιγόντος ὥς, ἐρῶ.

Ὀρέστης

ποῖ δῆτα; πόντου νοτερὸν εἶπας ἔκβολον;

Ἰφιγένεια

οὗ ναῦς χαλινοῖς λινοδέτοις ὁρμεῖ σέθεν.

Ὀρέστης

σὺ δ᾽ ἤ τις ἄλλος ἐν χεροῖν οἴσει βρέτας;

Ἰφιγένεια

1045ἐγώ· θιγεῖν γὰρ ὅσιόν ἐστ᾽ ἐμοὶ μόνῃ.

Ὀρέστης

Πυλάδης δ᾽ ὅδ᾽ ἡμῖν ποῦ τετάξεται πόνου;

Ἰφιγένεια

ταὐτὸν χεροῖν σοὶ λέξεται μίασμ᾽ ἔχων.

Ὀρέστης

λάθρα δ᾽ ἄνακτος ἢ εἰδότος δράσεις τάδε;

Ἰφιγένεια

πείσασα μύθοις: οὐ γὰρ ἂν λάθοιμί γε.

Ὀρέστης

1050καὶ μὴν νεώς γε πίτυλος εὐήρης πάρα.

Ἰφιγένεια

σοὶ δὴ μέλειν χρὴ τἄλλ᾽ ὅπως ἕξει καλῶς.

Ὀρέστης

ἑνὸς μόνου δεῖ, τάσδε συγκρύψαι τάδε.
ἀλλ᾽ ἀντίαζε καὶ λόγους πειστηρίους
εὕρισκ᾽: ἔχει τοι δύναμιν εἰς οἶκτον γυνή.
1055τὰ δ᾽ ἄλλ᾽ ἴσως — . ἅπαντα συμβαίη καλῶς.

イーピゲネイア
そらならどうしたら、私たちが殺されもせずに、目当てのものを取ってゆけるように運べるでしょう。 ここが故郷くにへ帰る仕事のなかで厄介なとこですのね、さあそれが思案のしどころなのだけど。

オレステース
ねえ、領主をやっつけてしまえないかね。1020

イーピゲネイア
まあ酷いことを言うのね、旅の者が主人あるじを殺そうなんて。

オレステース
だけどそれであなたや僕も助かるなら、思い切ってやるんだな。

イーピゲネイア
いえ、いけませんわ、その意気込みは結構だけど。

オレステース
ではどうだろう、僕をこの社殿のなかへそっと隠しといたら。

イーピゲネイア
それで闇にまぎれて、一緒に逃げ出そうというの。

オレステース
夜は盗みかくすもの、光明は真実にくと言うからな。

イーピゲネイア
なかには社の番士たちがいますもの、見つかってしまうわ。

オレステース
ああもう何もかも駄目だ、どうして無事に助かろう。

イーピゲネイア
ちょっといま新しい工夫を思いついたのだけれど。

オレステース
どういうのです、その考えを言って下さい、僕にも(解るように)。1030

イーピゲネイア
あなたの苦しみを巧く術策てだてに使おうというの。

オレステース
そりゃあ女ってのはいろんなの工夫が達者だからな。

イーピゲネイア
あなたはお母様を殺して、アルゴスから来たと言ってやりましょう。
オレステース
僕の不仕合せだって、役に立つなら利用して下さい。

イーピゲネイア
だから女神に献げるのは礼に添わないって。

オレステース
何のかどでです、何かわけがるのでしょう。
イーピゲネイア
不浄だから—浄らかなものは犠牲にしても差支えないけれど。

オレステース
それでどうして神像が巧く取れることになるのです。

イーピゲネイア
あなたを大海の流れで、浄めたいということにして—。

オレステース
でも、船に乗って来た目当ての像は、お宮のなかにあるんだから—。1040

イーピゲネイア
それも濯ぎ浄めなければって言いますわ、あなたがさわったので。

オレステース
一体どこへ行ってです。 大海の波に濡れた入江でもというのか—。

イーピゲネイア
あなたの船が、麻をなった綱に繿もやっているところへ。

オレステース
御像を手に捧げてくのは、あなたか、それとも外の人ですか。

イーピゲネイア
私ですわ、手を触れて障りのないのは私だけですから。

オレステース
このピュラデースはどんな役を、このなかで引受けてるのです。

イーピゲネイア

イーピゲネイア
あなたと同じ穢れが手に付いてると言います。

オレステース
で領主にかくして遣るつもりか、知らせといてですか。

イーピゲネイア
つくり話で説きつけて、‐知れずにはすまないでしょうから。

オレステース
ところで船の方は、もうちゃんと櫂の(音も)支度がすんでますよ。1050

イーピゲネイア
あとのことは、きっとあなたが巧くやって下さらなければ。

オレステース
ただ一つだけ大切なことがある—このひとたちがかくしててくれなければ。 だからさあ、頼んでください、何かと説きつける文句を見つけて。 それに女の人は、愁嘆がよく利くものですから。 外のことはまあ大概すべてうまくゆくだろうけれど—。
(呉 茂一 訳)

メモ

脚注にもあるように、二つの属格は「~のもの」を意味し、コロンで区切られた節にはそれぞれἐστίを補って考えると判りやすい。

γάρはエウリーピデースの悲劇では1024行目でのオレステースの提案に応えた、1025行目でのイーピゲネイアの質問に対しての理由となる。 出典を「不明」とした本課題文での役割は不明。 δέはコロンまでの文の前半との対照を出すためのものと思われる。

それらを考え併せると、「というのも(γάρ)、νύξκλέπτηςたちのもの(であり=ἐστί, 挿入して読む ; 脚注参照)、それに対して(δέ)、φῶςἀλήθειαのもの(である=ἐστί, 挿入して読む : 脚注参照)」、くらいの内容が文意と思われる。


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