メンテーまたはミンター
Μένθη, Μίνθα
Menthe, Mintha

名称のゆらぎ

カナ表記 ギリシア語表記 アルファベット表記 出典
ミンター Μίνθα Mintha オッピアノス(標準語形)
ミンテー Μίνθη Minthe ストラボーン, ニーカンドロス

注. オッピアノスでは固有名詞としてのミンターは出てこない。 ボラを釣るための餌にハッカ(ミンター)を混ぜ込むことがあり、その由来譚を紹介している。

概要

ハーデースと関係を持ち、ハッカに変じられた女性。

出自

父親はコーキュトス。 母親は不詳。
(オッピアノス, 『漁夫訓』, 486行目)

神話

ハッカに変じられた女性。 彼女を罰したのはデーメーテール(オッピアノス)またはペルセポネー(ストラボーンなど)とされる。

引用

オッピアノス, 漁夫訓, 486-497

τοῖσιν ὁμοῦ μίνθην εὐώδεα, τήν ποτε κούρην φασὶν ὑπουδαίην ἔμαναι, Κωκυτίδα Νύμφην· κλίνατι δ᾿ εἰς εὐγὴν Ἀϊδωνέος· ἀλλ᾿ ὅτε κούρην Περσεφόνην ἥρπαξεν ἀπ᾿ Αἰτναίοιο πόαγοιο, δὴ τότε μιν κλάζουσαν ὑπερφιάλοις ἐπέεσσι, 490 ζήλῳ μαργαίνουσαν ἀτάσθαλα, μηνίσασα Δημήτερ ἀμάθυνεν ἐπεμβαίνουσα, πεδίλοις· φῆ γὰρ ἀγαυοτέρη τε φυὴν καὶ κάλλος ἀμείνων Περσεφόνης ἔμαναι κυανόπιδος, ἐς δέ μιν αὐτὴν εὔξατο νοστήσειν Ἀϊδωνέα, τὴν δὲ μελάθρων 495 ἐξελάσειν· τοίη οἱ ἐπὶ γλώσσης θόρεν ἄτη. Ποίη δ᾿ οὐτιδανὴ καὶ ἐπώνυμος ἔκθορε γαίης,

ミントの葉が混ぜられる。語り伝えられることによれば、 ミント(ミンテー)はかつて冥界の乙女で、コキュトス川ニュンペーだった。 アイドーネウス(ハデス)と臥床を共にしたのだが、かれが 乙女ペルセポネアイトナ(エトナ)山から奪い取ってくると、 彼女は不遜な言葉を吐き、声高に不平を並べ立てた。 490 生意気にも嫉妬に狂ったのだ。それでデメテルは怒って、 これを両足で踏みつけて殺してしまったのだ。 というのも、自分の方が青黒い眼のペルセポネよりも、 姿は気高く、美しさは卓越していると吹聴していたし、いずれ自分のところへ アイドーネウスは戻ってくるだろう、ペルセポネは館から追われようと 公言していたからだ。かかる世迷い言が彼女の舌の上に躍ったわけだが、 やがて彼女の名にちなんで名づけられた、ありふれた草が地面から生じた。
(伊藤照夫 訳)

ストラボーン, 地誌, 8. 3. 14(C343)

πρὸς ἕω δ᾽ ἐστὶν ὄρος τοῦ Πύλου πλησίον ἐπώνυμον Μίνθης, ἣν μυθεύουσι παλλακὴν τοῦ Ἅιδου γενομένην πατηθεῖσαν ὑπὸ τῆς κόρης εἰς τὴν κηπαίαν μίνθην μεταβαλεῖν, ἥν τινες ἡδύοσμον καλοῦσι. καὶ δὴ καὶ τέμενός ἐστιν Ἅιδου πρὸς τῷ ὄρει τιμώμενον καὶ ὑπὸ Μακιστίων, καὶ Δήμητρος ἄλσος ὑπερκείμενον τοῦ Πυλιακοῦ πεδίου.

ピュロス市の近くにその東方にあたってミンテの名をもらった山があり、伝承説話によるとミンテは冥界神ハデスの愛を受けたためコレ女神に踏みつけられて姿が変り園に生える「はっか(ミンテ)」になった。 「匂い草」と呼ぶ人もいる。 それよりも、この山のそばにハデスの神苑があってマキストスの住民もここを大切に祀り、また、ピュロス平原より上の方にデメテルの社がある。
(飯尾都人 訳)

引用

ニーカンドロス, 毒物誌への古注, 375行への注

375. Στυφόεν δὲ ποτὸν τὴν ἡδύοσμον ἔφη κατ᾿ εὐφημισμόν. Μίνθη Ἅιδου παλλακὴ οὕτω καλουμέμη, ἣν διεσπάραξεν ἡ Περσεφόνη, ἐφ᾿ ᾗ τὴν ὁμώνυμον πόαν ἀνέδωκεν ὁ Ἅιδης.

飲み薬に甘い香りのものを混ぜることは、(飲みづらい薬を)飲みやすくする方法として語られている。 ミンテーハーデースの愛人—そのように呼ばれたのだが—彼女をペルセポネーはバラバラに粉砕し、ハーデースは(バラバラにされた)彼女の上に同じ名前を持つ草を生じさせた。
(2022.10.13 仮訳)

改訂履歴