練習 8.10

課題文

κόσμος πού τις ἡ σωφροσύνη ἐστὶ καὶ ἡδονῶν τινῶν καὶ ἐπιθυμιῶν ἐγκράτεια.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
κόσμος κόσμος 男性名詞 単数/主格 秩序, 飾り
πού πού 副詞 この語は変化しない どこかで, たぶん, なんとか
τις τις 不定代名詞 男女同形/単数/主格 何か
定冠詞 女性/単数/主格 σωφροσύνηにかかる
σωφροσύνη σωφροσύνη 女性名詞 単数/主格 節制, 中庸
ἐστί εἰμί 動詞 三人称/単数/現在/直説法/能動態 ~である
καί καί 小辞 この語は変化しない そして
ἡδονῶν ἡδονή 女性名詞 複数/属格 快楽
τινῶν τις 不定代名詞 男女同形/複数/属格 何か
καί καί 小辞 この語は変化しない ~と
ἐπιθυμιῶν ἐπιθυμία 女性名詞 複数/属格 欲望
ἐγκράτεια ἐγκράτεια 女性名詞 単数/主格 自制, 克己

脚注

特になし。

出典と翻訳

Πλάτων, 国家, 430 e

ἀλλὰ μέντοι, ἦν δ᾽ ἐγώ, βούλομαί γε, εἰ μὴ ἀδικῶ.

σκόπει δή, ἔφη.

σκεπτέον, εἶπον: καὶ ὥς γε ἐντεῦθεν ἰδεῖν, συμφωνίᾳ τινὶ καὶ ἁρμονίᾳ προσέοικεν μᾶλλον ἢ τὰ πρότερον.

πῶς;

κόσμος πού τις, ἦν δ᾽ ἐγώ, ἡ σωφροσύνη ἐστὶν καὶ ἡδονῶν τινων καὶ ἐπιθυμιῶν ἐγκράτεια, ὥς φασι κρείττω δὴ αὑτοῦ ἀποφαίνοντες οὐκ οἶδ᾽ ὅντινα τρόπον, καὶ ἄλλα ἄττα τοιαῦτα ὥσπερ ἴχνη αὐτῆς λέγεται. ἦ γάρ;

πάντων μάλιστα, ἔφη.

οὐκοῦν τὸ μὲν “κρείττω αὑτοῦ” γελοῖον; ὁ γὰρ ἑαυτοῦ κρείττων καὶ ἥττων δήπου ἂν αὑτοῦ εἴη καὶ ὁ ἥττων κρείττων·

「いやむろん、その気持ちはあるとも」とぼくは答えた、「当然そうあるべきだからね」
「では考察してください」と彼は言った。
「そうしなければ」とぼくは言った、「そして、一見したところ目につくのは、これまで見てきたものにくらべると、これは協和や調和といったものにもっともよく似ているということだ」
「どのような意味ですか」
つまり〈節制〉とは」とぼくは言った、「思うに、一種の秩序のことであり、さまざまの快楽や欲望を制御することだろう。 これは一般に『おのれにつ』という言い方で—それがどういう意味かは別として—言われていることろだし、そしてほかにも、いわばこの徳の目印となる足跡を示すような、これに類する言い方がいろいろとなされている。 そうだろう?」
「ええ、何にもましてそのとおりです」と彼は言った。
「ところでしかし、この『おのれに克つ』という言い方は、おかしくはないかね? なぜって、自分自身に克つ者は、当然また、自分自身に負ける者でもあるはずだし、自分自身に負ける者は、克つ者であるはずだからね。
(藤沢令夫 訳)

メモ

不定代名詞τιςが使われた例文を読む、というのがこの課題文の主な趣旨と思われる。 τιςencliticでもあるので、πούultimaが鋭アクセントを保っていることにも注意。 LSJではπουとなっており、この場合には、encliticとして直前の語のultimaにアクセントを与えている、と読む。

直訳すると、「たぶん(πού)なにか(τις)κόσμοςなんだよ、σωπροσύνηというものはね、そして(καί)(それはたぶん=πούを再帰的に見ている)何か(τινων)ἡδονήだとか(καί)ἐπιθυμίαといったものたちのἐγκράτειαである(だろうということだね, πούによる推量のニュアンスを引き継いでいる)」、くらいの内容が文意と思われる。 τινωvἡδονῶνにかかっている方の語で、見出し語のτιςにしてしまうと、前半に出て来るτιςと区別がつかなくなっていしまうので、このように表記した。

副詞πούが文全体の意味にかかっていると考えて、上のような解釈にしている。 出典と翻訳で見た訳文にしても、同じように解釈しているように見える。

どこまで日本語として意訳するかにもよるが、ἡδονῶν τινῶνἐπιθυμιῶνも複数で表されていることに注意。 つまりἡδονήἐπιθυμίαといったカテゴリに属するいろいろなことの(属格)ἐγκράτειαである、ということを文の後半で述べている。


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