練習 8.9

課題文

τί δὲ οἰ ἄνθρωποι ;
θεοὶ θνητοί.
τί δὲ οἱ θεοί ;
ἄνθρωποι ἀθάνατοι.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
τί τίς 疑問代名詞 中性/単数/主格
δέ δέ 小辞 この語は変化しない さらに, しかし, そして
οἱ 定冠詞 男性/複数/主格 ἄνθρωποιにかかる
ἄνθρωποι ἄνθρωπος 男性名詞 複数/主格 人間
θεοί τηεός 男性名詞 複数/主格
θνητοί θνητός 形容詞 男性/複数/主格 死すべき
τί τίς 疑問代名詞 中性/単数/主格
δέ δέ 小辞 この語は変化しない さらに, しかし, そして
οἱ 定冠詞 男性/複数/主格 θεοίにかかる
θεοί θεός 男性名詞 複数/主格
ἄνθρωποι ἄνθρωπος 男性名詞 複数/主格 人間
ἀθάνατοι ἀθάνατος 形容詞 男性/複数/主格 不死の

脚注

特になし。

出典と翻訳

Λουκιανός, 哲学諸派の売り立て, 14

ἄπειρος. ὢ τῆς ὕβρεως, οὐ παύσῃ γελῶν; σὺ δὲ τί κλάεις, ὦ βέλτιστε; πολὺ γὰρ οἶμαι κάλλιον σοὶ προσλαλεῖν. Ἡράκλειτος ἡγέομαι γάρ, ὦ ξεῖνε, τὰ ἀνθρωπήϊα πρήγματα ὀϊζυρὰ καὶ δακρυώδεα καὶ οὐδὲν αὐτέων ὅ τι μὴ ἐπικήριον τὸ δὴ οἰκτείρω τε σφέας καὶ ὀδύρομαι, καὶ τὰ μὲν παρεόντα οὐ δοκέω μεγάλα, τὰ δὲ ὑστέρῳ χρόνῳ ἐσόμενα πάμπαν ἀνιηρά, λέγω δὲ τὰς ἐκπυρώσιας καὶ τὴν τοῦ ὅλου συμφορὴν ταῦτα ὀδύρομαι καὶ ὅτι ἔμπεδον οὐδέν, ἀλλ᾽ ὅκως ἐς κυκεῶνα τὰ πάντα συνειλέονται καί ἐστι τὠυτὸ τέρψις ἀτερψίη, γνῶσις ἀγνωσίη, μέγα μικρόν, ἄνω κάτω περιχωρέοντα καὶ ἀμειβόμενα ἐν τῇ τοῦ αἰῶνος παιδιῇ. Ἀγοράστης τί γὰρ ὁ αἰών ἐστι; Ἡράκλειτος παῖς παίζων, πεσσεύων, διαφερόμενος, συμφερόμενος. Ἀγοράστης τί δὲ ἄνθρωποι; Ἡράκλειτος θεοὶ θνητοί. Ἀγοράστης τί δὲ θεοί; Ἡράκλειτος ἄνθρωποι ἀθάνατοι. Ἀγοράστης αἰνίγματα λέγεις, ὦ οὗτος, ἢ γρίφους συντίθης; ἀτεχνῶς γὰρ ὥσπερ ὁ Λοξίας οὐδὲν ἀποσαφεῖς. Ἡράκλειτος οὐδὲν γάρ μοι μέλει ὑμέων. Ἀγοράστης τοιγαροῦν οὐδὲ ὠνήσεταὶ σέ τις εὖ φρονῶν. Ἡράκλειτος ἐγὼ δὲ κέλομαι πᾶσιν ἡβηδὸν οἰμώζειν, τοῖσιν ὠνεομένοισι καὶ τοῖσιν οὐκ ὠνεομένοισι. Ἀγοράστης τουτὶ τὸ κακὸν οὐ πόρρω μελαγχολίας ἐστὶν οὐδέτερον δὲ ὅμως αὐτῶν ἔγωγε ὠνήσομαι. Ἑρμῆς ἄπρατοι καὶ οὗτοι μένουσιν. Ζεύς ἄλλον ἀποκήρυττε.

(買い手) (引用者注 : 冒頭ではデーモクリトスが一切のものは空虚ケノンであり原子アトモンの運動で無限アペイリエーであると主張したことへの反論)いや、お前こそ真実空虚で無知アペイロスなのだ。何という傲慢な男だ。笑うのをやめないか。〔今一人に向い〕君はなぜ泣いているんだね、ねえ君、君と話す方がずっといいと思うのだが。 ヘラクレイトス なぜというに、見知らぬ人よ、わしは人の世のことが、傷ましくも悲しいものであって、いかなるものも滅びないものはないと考えるからだ。それ故わしは人間共のために憐み嘆くのだ。わしは彼等の現在の悲しみは大したものとは考えないが、将来来るところのものは、全く恐るべきものなのだ。わしのいうのはつまり劫火と万有の壊滅とだ。わしが嘆くのは、そのことと、それから何一つ常住のものはなく、万物は混合酒を造るかのように雑然と入り混じり、快と不快と、知と不知と、大と小とが、それぞれ同一のものであって、上へ下へと移り行き、永遠アイオーンの遊ぶがままに交替することだ。 買い手 永遠アイオーンとは何かね。 ヘラクレイトス 駒を散らせたり集めたりして、将棋をして遊ぶ小児だ。 買い手 では人間とは何か。 ヘラクレイトス 死すべき神々だ。 買い手 神々とは何。 ヘラクレイトス 不死なる人間だ。 買い手 君、謎を語っているのか。それとも迷宮を築いているのか。君はまるでアポロンのように何一つはっきり言わないのだね。 ペラクレイトス わしはお前達なぞ眼中にないからな。 買い手 それは、正気のある者だったら、君のことを買いはすまい。 ヘラクレイトス 買っても買わなくても、成年に達した者はすべて慟哭どうこくすることを、わしは命令する。 買い手 この男の病気は狂気と大して変わらないな。ところで、私は勿論どちらも買わんつもりだ。 ヘルメス あれらも売れずに残りましたよ。 ゼウス 他のを持ち出せ。 (山田潤二 訳)

メモ

疑問代名詞τίが使われていることを把握するのが本課題文の主旨と思われる。 出典と翻訳の項目で見た通りの内容が文意。

δέは巻末の語彙集から訳語を持って来ているが、実際に訳そうとすると訳出しづらい語。 μένと対になって、「(先に述べた一方に対して)もう一方は」となるのがよく出て来るが、他に、単体で使われて、先行する文の内容から少し視点をずらした文を導くことが多いように感じる。

ルーキアーノスが誇張して茶化している哲学者たちの学説は、恐らくはルーキアーノス自身が生きた時代での、やり玉に挙げられた哲学者たちに由来する学説と思われる。 課題文の箇所のような内容は確認できなかったが、その前後に出て来るやりとりのいくつかの元ネタとなっていそうなものは、ディオゲネース・ラーエルティオス, 『ギリシア哲学者列伝』,第9巻1章(ヘーラクレイトス)に見ることができる。

9.1.8

さて、それはそれとして、彼の学説の個々の点は、次のようなものである。 すなわち、火が(万物の)構成要素(ストイケイオン)であり、万物は、火の稀化と濃化によって生じたところの、火の交換物である。 —ただし、この点については、彼は少しも明確な説明をしていないのであるが。 また、万物は対立によって生じるし、その全体は河のように流れている。 さらに、万物は限られており、世界はただ一つあるだけである。 そして世界は、全時間にわたって、一定の周期に従いながら、交互に、火から生まれて、また再び火へ帰るのである。 そしてこのことは、宿命に従って起るのである。 また、相反するもののうち、生成へと導くものは戦いや争いと呼ばれているし、他方、万物が火になる状態(エクピュローシス)へと導くものは和合や平和と呼ばれている。 そしてこの変化を、彼は「上り、下りの道」と名づけて、世界はこの変化によって生じるのだとしているのである。
(加来彰俊 訳)

9.1.3

そして彼は、アルテミスの神域へ引きこもって、子供たちと骰子さいころ遊びに興じていたのだが、あるとき、エペソスの人たちが彼を取り巻いて立っていると、「このろくでなし、、、、、者めが! 何をいったい、お前たちは驚いているのか。 お前たちといっしょになって政治のことにかかわるよりは、ここでこうしている方がよっぽどましではないかね」と彼は言ったのだった。

そして最後には、彼は人間嫌いになって、世間から遠のいて山のなかにこもり、草や葉を食糧としながら暮らしていた。 しかしまた、そのことゆえに、彼は水腫症にかかったので、町に戻り、そして医者たちに、洪水を旱魃に変えることができるかどうかと、謎をかけるような形で問いかけた。 しかし医者たちは、その問いの意味が理解できなかったので、彼は牛舎へ行って牛の糞のなかに身体を埋めて、糞のもつ温もりによって体内の水分が蒸発してくれることを期待した。 しかし、そんなふうにしても何の効き目もないまま、彼は六十歳で死んだのである。
(加来彰俊 訳)

9.1.2

しかしまた、「火事を消すことよりも、傲慢な心を鎮めることのほうがもっとなすべきなのだ」とか、「国民は、あたかも城壁のために戦うようにして、法のために戦わねばならない」と彼はつねづね語っていた。 彼はまた、自分の友人のヘルモドロスを国外追放にしたということで、エペソスの人たちを攻撃しているが、そのなかでは、次のように述べている。 「エペソスの人間なんて、成年に達したものはすべて、首をくくって死んでしまったほうがいい。 そして国家は、未成年の者たちの手にゆだねるべきだ。 彼らは、ヘルモドロスという、自分たちのなかでもいちばん有用な人物を、『われわれのうちには、いちばん有用な人物なんか一人もいらない。 誰かそんな人間がいるなら、どこかよその土地へ行って、ほかの人たちと暮らすことだ』と言って、追い出したのだから」と。 そしてまた、エペソスの人たちから法律を制定してくれと頼まれたときにも、その国はすでに悪しき国制の下におかれてしまっているからという理由で、彼はその要請を拒否したのだった。
(加来彰俊 訳)


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