練習 2.B
課題文
Ὦ τέκνα, Κάδμου τοῦ πάλαι νέα τροφή,
τίνας ποθ᾿ ἕδρας τάσδε μοι θοάζετε
ἱκτηρίοις κλάδοισιν ἐξεστεμμένοι ;
πόλις δ᾿ ὁμοῦ μὲν θυμιαμάτων γέμει,
ὁμοῦ δὲ παιάνων τε καὶ στεναγμάτων·
ἁγὼ δικαιῶν μὴ παρ᾿ ἀγγέλων, τέκνα,
ἄλλων ἀκούειν αὐτὸς ὧδ᾿ ἐλήλυθα,
ὁ πᾶσι κλεινὸς Οἰδίπους καλούμενος.
出典と翻訳
ソポクレース, 『オイディープース王』, 1-8行
メモ
音読問題なので、語形の解釈や意味の検討を要求されていない。 なので、ここは素直に
オー テクナ カドムー トゥー パライ ネアー トロペー
ティナス ポテドラース タースデ モイ トアゼテ
ヒクテーリオイス カラドイシン エクセステメノイ
ポリス ドムー メン テューミアーマトーン ゲメイ
ホムー デ パイアーノーン テ カイ ステナグマトーン
ハーゴー ディカイオーン メー パランゲローン テクナ
アローン アクーエイン アウトス ホーデレーリュタ
ホ パーシ クレイノス オイディープース カルーメノス
のように読めれば、初級文法的には問題ないと思われる。
ただ、この課題文は悲劇作品が出典であり、悲劇はある韻律をもった韻文なので、かならずしもこうは読まれなかった可能性がある。 韻律とは音節の長短のパターンを繰り返したものである。
悲劇の役者が語る部分はἰαμβὸς τρίμετρος(iambos trimetros)と呼ばれる韻律で書かれている。 ἰαμβόςというのは短長格、つまり短い音節(⏑)と長い音節(‒)をここでは二回繰り返したもの(⏑‒⏑‒)を一つのユニットとし、これを一行で三回(τρίς)繰り返した韻律(⏑‒⏑‒ ⏑‒⏑‒ ⏑‒⏑‒)がἰαμβὸς τρίμετροςになる。
ただし、実際には各ユニットの最初の音節は長くてもよかったらしい。 その結果、実際の韻律を長短で表すと
⏓‒⏑‒ ⏓‒⏑‒ ⏓‒⏑‒
というものになる。 このとき、いくつか留意すべき点がある。 細かく見るとかなりあるが、大きなものとしては
- 行末では息継ぎや余情を持たせるために休止を入れていたので、短い音節でも長い音節として数えられていたらしいこと。
- 短い音節の直後に閉鎖音(π, φ, β, τ, θ, δ, κ, γ, χ)と流音(λ, ρ)が連続する音節が続く場合、かならずしも「位置によって長い」音節になるとは限らないこと。
また、これらの作品が書かれた古代においては、大文字しかなく、今日の私たちが「古典ギリシア語」として学ぶときに使う、記号類も、句読点も、単語間のスペースもなかった。
これらを考慮して課題文を韻律で区切ってみると
のように区切ることができ、韻律の区切りをあえて強調してカナ書きすると
オーテクナカ ドムートゥーパライ ネアートロペー
ティナスポテ ドラースタデモイ トアゼテ
ヒクテーリオイス クラドイシネ クセステメノイ
ポリスドムー メンテューミアー マトーンゲメイ
ホムーデパイ アーノーンテカイ ステナグマトーン
ハーゴーディカイ オーンメーパラン ゲローンテクナ
アローンアクー エイナウトソー デレーリュタ
ホパーシクレイ ノソイディープー スカルーメノス
のように読んだのかもしれない。