練習 9.9
課題文
Ξέρξης ἐκέλευσε μάστιγι πλῆξαι τὸν Ὲλλήσποντον.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
Ξέρξης | Ξέρξης | 男性名詞 | 単数/主格 | クセルクセース |
ἐκέλευσε | κελεύω | 動詞 | 三人称/単数/アオリスト/直説法/能動態 | 命じる |
μάστιγι | μάστιξ | 女性名詞 | 単数/与格 | 鞭 |
πλῆξαι | πλήττω | 動詞 | 不定詞/アオリスト/能動態 | 打つ |
τόν | ὁ | 定冠詞 | 男性/対格 | Ἑλλήσποντονにかかる |
Ἑλλήσποντον | Ἑλλήσποντος | 男性名詞 | 単数/対格 | ヘレースポントス |
脚注
特になし。
出典と翻訳
Ἡρόδοτος, 7. 35. 1
ὡς δ᾽ ἐπύθετο Ξέρξης, δεινὰ ποιεύμενος τὸν Ἑλλήσποντον ἐκέλευσε τριηκοσίας ἐπικέσθαι μάστιγι πληγὰς καὶ κατεῖναι ἐς τὸ πέλαγος πεδέων ζεῦγος. ἤδη δὲ ἤκουσα ὡς καὶ στιγέας ἅμα τούτοισι ἀπέπεμψε στίξοντας τὸν Ἑλλήσποντον.
その知らせをうけたクセルクセスは、ヘレスポントスに対して大いに怒り、家臣に命じて海に三百の鞭打の刑を加え、また足枷一対を海中に投ぜしめた。
それのみか私の聞いたところによれば、ヘレスポントスに烙印を押させようと、その係りのものを鞭打役人らとともに派遣したともいうが、それはともかくクセルクセスが役人に命じ次のような野蛮不遜の言葉とともに海を鞭打たせたことは確かである。
(松平千秋 訳)
なぜクセルクセースが怒ったのかというと、同7.34にあるように、ヘレースポントスに橋をかけ進軍しようとしていたが、完成直後に突風にあおられて橋が完膚なきまでに破壊されたから。
メモ
μάστιγιが第三変化名詞であると読めることが、本課題文の主旨と思われる。 この与格は恐らくは手段の与格で「μάστιξでもって」くらいの意味。 引用元からずいぶんと改変されているが、文の主旨は同じ。
本課題文の内容に則して訳すと、「ΞέρξηςはἙλλήθσποντοςをμάστιξでπλήττωすること(不定詞)をκελεύωした」くらいの内容が文意と思われる。
πλῆξαιという不定詞のアオリストが、どういうニュアンスか気になるところ。
- 過去の事象であることを表している
- その時だけの一回的行為(アオリストの動作態)として表している
- 引用元にはある300回という回数を、すべてすっかり(アオリストの動作態)として表している
- もっと他の何か
などが考えられるが、このあたりは受け手の判断に委ねられているようにも感じる。
本課題文とは何の関係もないが、Ἑλλήσποντοςは「ヘレーの海」の意。 アタマースの後妻イーノーが、前妻ネペレーとの間に生まれたプリクソスとヘレーに対して陰謀を働いたとき、ネペレーはプリクソスとヘレーを救うために黄金の羊を遣わした。 この羊に乗って逃げる途中、ヘレーが落ちた海がῈλλήσποντος。 羊はこの後黒海の奥地コルキスまで逃げた。 そして羊は犠牲として捧げられ、黄金の羊毛は龍が見張ることとなったが、この羊毛がアルゴナウテースたちの目的物。 さらに羊は牡羊座として星座となった。