練習 11.10
課題文
ὁ χρόνος ἐστὶν ἐν ᾧ καιρός, καιρὸς ἐν ᾧ χρόνος οὐ πολύς.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ὁ | ὁ | 定冠詞 | 男性/単数/主格 | χρόνοςにかかる |
χρόνος | χρόνος | 男性名詞 | 単数/主格 | 時間 |
ἐστίν | εἰμί | 動詞 | 三人称/単数/現在/直説法/能動態 | ~である |
ἐν | ἐν | 前置詞 | この語は変化しない | (与格の)中に |
ᾧ | ὅς | 関係代名詞 | 男性/単数/与格 | ~であるところのもの |
καρός | καιρός | 男性名詞 | 単数/主格 | 好機 |
καιρός | καρός | 男性名詞 | 単数/主格 | 好機 |
ἐν | ἐν | 前置詞 | この語は変化しない | (与格の)中に |
ᾧ | ὅς | 関係代名詞 | 男性/単数/与格 | ~であるところのもの |
χρόνος | χρόνος | 男性名詞 | 単数/主格 | 時間 |
οὐ | οὐ | 否定辞 | この語は変化しない | ~ない |
πολύς | πολύς | 形容詞 | 男性/単数/主格 | 多い |
脚注
πολύς : 「多くの」(男性/単数/主格, P. 63, §86 参照)
出典と翻訳
メモ
次のように語を補って読むと、判りやすいかもしれない。
ὁ χρόνος ἐστὶν οὗτος ἐν ᾧ καιρός, καιρὸς ἐστὶν οὗτος ἐν ᾧ χρόνος οὐ πολύς.
指示代名詞οὗτος(「それ」)は次の第12課で学ぶ。 どういことかというと、まず前半部に着目する。
挿入して考えた指示代名詞οὗτοςが関係代名詞ᾧの先行詞となる。 残る関係節は主格のκαιρόςであるから、これは恐らく「存在する」くらいの意味を持ったἔστι(ν)が省略されているのだと考える。 この場合、日本語としては「持つ」とした方が判りやすいかもしれない。
ここまでをまとめると、
- 定冠詞がつけられて主語として読むὁ χρόνοςと挿入された指示代名詞οὗτοςが、動詞ἐστίνによって等価なものとされる、つまり「χρόνοςはοὗτοςである」と読む。
- 指示代名詞οὗτοςがどのようなものであるかというと、関係代名詞ᾧの先行詞であるので、「その中に(ἐν ᾧ) καιρός(が存在する)ところのοὗτος」と考えることができる。
- これらをまとめると「χρόνοςはその中に(ἐν ᾧ) καιρόςが存在するところのοὗτοςである」と読んで語句を整えていく。
のような機序で読み進み、後半も同様に読んでいく。
全体をまとめると、「χρόνοςとはその中に(ἐν ᾧ) καιρόςを持つものであり(ἐστί)、καιρόςとはその中に(ἐν ᾧ)多くはない(οὐ πολύς) χρόνοςを持つものである」くらいの内容が本課題文の文意と思われる。