練習 11.9

課題文

ἡ Σφίγξ εἶχε πρόσωπον μὲν γυναικός, στῆθος δὲ καὶ οὐρᾱ̀ν λέοντος, καὶ πτέρυγας ὄρνῑθος.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
定冠詞 女性/単数/主格 Σφίγξにかかる
Σφίγξ Σφίγξ 女性名詞 単数/主格 スピンクス
εἶχε ἔχω 動詞 三人称/単数/未完了/直説法/能動態 持つ
πρόσωπον πρόσωπον 中性名詞 単数/対格
μέν μέν 小辞 この語は変化しない (δέと共に)一方で
γυναικός γυνή 女性名詞 単数/属格 女, 妻
στῆθος στῆθος 中性名詞 単数/対格 胴体
δέ δέ 小辞 この語は変化しない (μένと共に)他方では
καί καί 小辞 この語は変化しない そして
οὐράν οὐρά 女性名詞 単数/対格
λέοντος λέων 男性名詞 単数/属格 ライオン
καί καί 小辞 この語は変化しない そして
πτέργας πτέρυξ 女性名詞 複数/対格
ὄρνιθος ὄρνις 男性/女性名詞 単数/属格

脚注

特になし。

出典と翻訳

不明。 とはいえ、(偽)アポロドーロス(3.5.8)の記述が非常に似ているように思える。

Λάιον μὲν οὖν θάπτει βασιλεὺς Πλαταιέων Δαμασίστρατος, τὴν δὲ βασιλείαν Κρέων ὁ Μενοιςέως παραλαμβάνει. τούτου δὲ βασιλεύοντος οὐ μικρὰ συμφορὰ κατέσχε Θήβας. ἔπεμψε γὰρ Ἥρα Σφίγγα, ἣ μητερὸς μὲν Ἐχίδνης ἦν πατρὸς δὲ Τυφῶνος, εἶχε δὲ πρόσοπον μὲν γυναικός, στῆθος δὲ καὶ βάσιν καὶ οὐρὰν λέοντος καὶ πτέρυγας ὄρνιθος.

ラーイオスプラタイアイの王ダマシストラトスが葬り、王国はメノイケウスの子クレオーンが継いだ。 彼の治世中に小さからぬ災害がテーバイを襲った。 というのは、ヘーラーがエキドナを母とし、テューポーンを父とするスピンクスを送ったからである。 これは女面にして胸と足と尾は獅子、鳥の羽を持っていた
(高津春繁 訳)

なんで「足」がオミットされているのか、は謎。

メモ

学習の要点

使われている名詞は第三変化名詞が多く、9課から続いてきた第三変化の総仕上げともいえる内容。

εἶχεの形について

εἶχεの形について、なぜこうなるか疑問に思う人はいないか、という質問が先生の方から発せられた。 単純に加音εἔχωにつくのであれば、ἦχεのように長母音になる(時量的加音をとる)のが原則だから、というのがその理由。

ἔχωの語幹にはἐχ-(無気)だけでなくἑχ-(有気)もあり、これらのことから本来はσεχ-というような語幹を持っていたのではないか、と想像されているとのこと。 そうであるとすれば

  1. 未完了(副時称)であるために加音が発生する(σεχε)
  2. 母音に挟まれたσが脱落する(εχε)
  3. 約音規則により、ε+ε=ειとなる(εἶχε)

のような機序であろうと思われる。

なぜλέοντοςと男性形を使っているのか

Σφίγξ自体は女怪であり、名詞も女性名詞。 しかし胴体、尻尾は男性名詞であるλέωνという語の属格を使っている。 このことに関して、次のような見解が出てきた。

  1. 雄ライオンの胴体としての特徴が何らかの理由から必要であった
  2. ἄνθρωποςが男性名詞であるにもかかわらず女性を含めた 「人間」として表現されることもあるように、男性名詞で種族を代表させておりあまり深い意味はない

訳文のまとめ

Σφίγξγυνήπρόσωπονἔχωするが(μέν)、その一方で(δὲ καί)λέωνστῆθοςοὐράを、さらに(καί)ὄρνιθοςπτέρυξを(ἔχωしていた)」くらいの内容が本課題文の文意と思われる。


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