§55. 所有の与格(dative of possession)
概要
εἰμίまたは類義の動詞(SMYTH §1476.では他にγίγνομαι, ὑπάρχω, φύωを挙げている)と与格によって、与格は所有者を表わすことがある。 このような用法を「所有の与格(dative of possession)」という。
ἦσαν δὲ τῷ Κροίσῳ δύο παῖδες.
クロイソスには二人の子があった。
所有の与格であることを考慮せずに直訳すると、「クロイソスにおいて、二人の子供があった」。 意訳をするならば与格をとっているクロイソスは、二人の子供の所有者(現代的な意味合いでは子供の「所有者」という表現が適切ではない、ということは承知の上で)である、という認識からこのような用法になっていると思われる。