§63. 二重母音幹名詞の変化
§63.
数 | 格 | 幹末母音 | |||
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-ευ, -ε, -η | -ου, -ο | -αυ, -ε, -η | |||
単数 | 主格 | (βασιληϝς) | βασιλεύς | βοῦς | ναῦς |
呼格 | βασιλεῦ | βοῦ | ναῦ | ||
対格 | (βασιλη(ϝ)ᾰ) | βασιλέᾱ | βοῦν | ναῦν | |
属格 | (βασιλη(ϝ)ος) | βασιλέως | βοός | νεώς | |
与格 | (βασιλη(ϝ)ι) | βασιλεῖ | βοΐ | νηΐ | |
複数 | 主格/呼格 | (βασιλη(ϝ)ες) | βασιλεῖς, -ῆς | βόες | νῆες |
対格 | (βασιλη(ϝ)ας) | βασιλέᾱς | βοῦς | ναῦς | |
属格 | (βασιλη(ϝ)ων) | βασιλέων | βοῶν | νεῶν | |
与格 | (βασιληϝσι) | βασιλεῦσι | βουσί(ν) | ναυσί(ν) | |
双数 | 主格/呼格/対格 | (βασιλη(ϝ)ε) | βασιλῆ | βόε | νῆε |
属格/与格 | (βασιλη(ϝ)οιν) | βασιλέοιν | βοοῖν | νεοῖν |
語幹および幹末母音が融合した後に残った部分, 格語尾および幹末母音と融合して残った部分, 融合した母音を色分けすると、恐らくは上記のようになる。
βασιλεύςについて
- ()内の形はチエシュコの§21.(P.55)によった。
- チエシュコ §21.1には以下のような指摘がある
- 単数/主格形と複数/与格形ではオストホフの法則により、幹末母音が-ηϝ- > -ευ-となる。
- 単数/呼格形は印欧祖語からそのまま継承された形だと思われる。
- その他の変化形では、幹末のϝは直後に母音で始まる格語尾が来ると消失した。
- 単数/対格および属格, 複数/対格ではηα, ηοが音量転換によって、それぞれηᾱ, εωになる。
- ϝは紀元前100年ころには使われなくなった(使われなくなった時期は、地域によってかなり異なる)文字ディガンマで、音価はwであるとされている。