§297
英語原文
ἡδύς sweet is thus declined :
SINGULAR | ||||||
Masc. | Fem. | Neut. | ||||
Nom. | ἡδύ-ς | ἡδεῖα | ἡδύ | |||
Gen. | ἡδέ-ος | ἡδείᾱς | ἡδέ-ος | |||
Dat. | (ἡδέϊ) | ἡδεῖ | ἡδείᾳ | (ἡδέϊ) | ἡδεῖ | |
Acc. | ἡδύ-ν | ἡδεῖα-ν | ἡδύ | |||
Voc. | ἡδύ | ἡδεῖα | ἡδύ | |||
DUAL | ||||||
N. A. V. | ἡδέ-ε | ἡδείᾱ | ἡδέ-ε | |||
G. D. | ἡδέ-οιν | ἡδεί-αιν | ἡδέ-οιν | |||
PLURAL | ||||||
N. V. | (ἡδέες) | ἡδεῖς | ἡδεῖαι | ἡδέ-α | ||
Gen. | ἡδέ-ων | ἡδειῶν | ἡδέ-ων | |||
Dat. | ἡδέ-σι(ν) | ἡδείαις | ἡδέ-σι(ν) | |||
Acc. | ἡδεῖς | ἡδείᾱς | ἡδέ-α |
So βαθύς deep, γλυκύς sweet, ευρύς broad, ὀξύς sharp, ταχύς swift.
a. In ἡδεῖα -ι̯α has been added to ἡδεϝ- = ἡδευ̯-, a stronger form of the stem ἡδυ- (cp. 270). The nominative masculine ἡδεῖς is used for the accusative.
b. The adjectives of this declension are oxytone, except ἥμισυς half, θῆλυς female, and some compounds, as δίπηχυς of two cubits.
日本語解釈
形容詞ἡδύς(甘い, 快い)は以下のように変化する。
数 | 格 | 性 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 中性 | |||||
単数 | 主格 | ἡδύς | ἡδεῖα | ἡδύ | |||
呼格 | ἡδύ | ἡδεῖα | ἡδύ | ||||
対格 | ἡδύν | ἡδεῖαν | ἡδύ | ||||
属格 | ἡδέος | (ἡδείᾱς) | ἡδείᾱς | ἡδέος | |||
与格 | (ἡδέϊ) | ἡδεῖ | (ἡδεῖαϊ) | ἡδείᾳ | (ἡδέϊ) | ἡδεῖ | |
複数 | 主格/呼格 | (ἡδέες) | ἡδεῖς | (ἡδεῖαι) | ἡδεῖαι | ἡδέα | |
対格 | (ἡδέις) | ἡδεῖς | (ἡδεῖανς) | ἡδείᾱς | ἡδέα | ||
属格 | ἡδέων | (ἡδειάων) | ἡδειῶν | ἡδέων | |||
与格 | ἡδέσι(ν) | (ἡδεῖαις) | ἡδείαις | ἡδέσι(ν) | |||
双数 | 主格/呼格/対格 | (ἡδέε) | ἡδεῖ | ἡδείᾱ | (ἡδέε) | ἡδεῖ | |
属格/与格 | ἡδέοιν | (ἡδεῖαιν) | ἡδείαιν | ἡδέοιν |
同じ変化をするものには、βαθύς(深い), γλυκύς(甘い), ευρύς(広い), ὀξύς(鋭い), ταχύς(速い)などがある。
a. 女性/単数/主格のἡδεῖαは人称語尾-ι̯αが語幹ἡδεϝ- = ἡδευ̯-についたものであるが、これは語幹ἡδυ-の「強い」形である(§270を参照のこと)。 男性/複数/対格は、男性/複数/主格ἡδεῖςの借用である。
b. このような変化をする形容詞は、一般的にいって鋭調語であるが、いくつかの例外もある。 ἥμισυς(半分の), θῆλυς(女性の, 雌の), そしてδίπηχυς(2ペーキュスの)のような合成語のいくつかなどは、例外的なアクセントを持つ。
メモ
- 語幹または幹末母音が母音融合した後に残った語幹の一部、融合した母音と思われる箇所を色分けしてみた。
-
Smythもチエシュコ(P.74)も、女性/単数/属格で語尾のςを格語尾として分離していない。
このことについて、ファイルを最初に作成している時点(2021.1.18現在)で以下のような疑問を拭い去り切れていない。 - 一番素直な考え方は、§212で示されるように、長音化した幹末母音ᾱに格語尾ςがついたもの。
それならばἡδείᾱ-ςのように書いてありそうなものだが、ἡδείᾱςのように書かれている。
つまり、幹末母音が何等かの母音融合をしていると判断されているように思われる。 - アクセント位置はδの直後が基本位置であるように感じるが、幹末母音が長音化したときの語幹は格語尾との間に長母音があるとしたらἡδειά-になり、語形ができあがったときのアクセントは先に位置していた幹末母音にあったことを示すために、ἡδειᾶςのようになるはずである。
- 格語尾との間に挿入される母音が短母音であれば語幹はἡδεία-のまま合成されてἡδείᾱςのようになると思われる。
- このとき挿入されうる短母音は、§59より、αまたはεと考えられるが、そのような母音がどこから来たのかの確信が持てない。
- 複数/対格のように、本来は-νςという格語尾が、幹末母音のαと融合して-ᾱςとなっているのとは、違うように思える。
- かなりムリヤリな可能性としては、a)幹末母音のαが脱落して、b)語幹と格語尾ςの間に長母音ᾱが挿入されたのであれば語幹はἡδεί-のようになるであろうから、結果としてἡδείᾱςのようにはなるのだろう。