§939.
英語原文
The nominative is the case of the subject of a finite verb and of a predicate noun in agreement with the subject. Πρόξενος παρῆν, Proxenus was present X. A. 1.2.3, Κλέαρχος φυγὰς ἦν Clearchus was an exile 1.1.9
日本語解釈
主格とは定形動詞の主語となる格のことで、述語名詞は主語と数, 格が一致する。
Πρόξενος παρῆν.
プロクセノスが到着した。
(クセノポーン, 『アナバシス』, 1.2.3)
Πρόξενοςが男性名詞の単数/主格。 παρῆνはπάρειμιという動詞の三人称/単数/未完了過去/直説法/能動態。 πάρειμιはπαρά+εἰμίとπαρά+εἶμιの組み合わせによる二種類があるが、ここでは恐らくπαρά+εἰμίの方。
ここで大切なことは、Πρόξενοςが主格をとっており、文の主語になっている、ということ。
Κλέαρχος φυγὰς ἦν.
クレアルコスは亡命者であった。
(クセノポーン, 『アナバシス』, 1.1.9)
Κλέαρχοςは男性名詞の単数/主格。 φυγὰςは名詞(男女同形)の単数/主格。 Κλέαρχοςが男性なので、ここでは男性名詞と考えるのが普通。 ἦνはεἰμίの三人称/単数/未完了過去/直説法/能動態。
主語であるΚλέαρχοςと述語名詞であるφυγὰςの数(単数), 格(主格)が一致(agree with)していることが、ここでのポイント。
メモ
定形動詞(finite verbs)とは、不定詞(infinitive)に対立する概念で、普通に動詞的変化(conjugation)をしている動詞のこと。 不定詞は古くは「不定法」として法(mood)の一つとされており、そういうことをふまえて書くと、直説法(indicative)または接続法(subjunctive)または希求法(optative)または命令法(imperative)の形をとっている動詞のこと。
一致(agreement with)とは、名詞同士でであれば数, 格が一致すること。 名詞と形容詞であれば、性, 数, 格が一致すること。 主語となる名詞と述語名詞の性が異なることは、十分にあり得る。