ここでは私が参照している資料をリストします。 全部が全部に眼を通しているわけでは決してありません(笑)
また、現在では絶版となっているものもあるようです。 あくまで「参考」程度に。
恐らく、日本を含む英語圏でもっとも信頼できる辞書。 難点なのはやはり「英語で」書かれていることでしょう。 一番大きい9th edition、中約版のintermediate、縮約版のabridgedがあります。 中約版と縮約版は版が古く7th editionに準拠となっているハズです。 でも、カンタンな調べものには便利です。 Perseus ProjectからIntermediate準拠の CD-ROMが出ているようです。 また、このサイトのオンラインによる Digital Libraryは 9th editionに準拠したテキストとなっています。
非常によくまとめられた神話辞典。 多くの異説なども細かく記載されており、記述も正確です。 ただし、辞典なのでかなり淡々と書かれており、そういった記述に慣れない人には とっつきにくいかもしれません。
あ、でもバトラコミュオマキアの項で、「アテーナーの要請によりゼウスが介入」となっているのはウソだなぁ。 少なくともLoebのEvelyn-whiteの訳を見る限り(私の英文読解能力が腐りまくってないかぎり(汗))では。 下のアウグスチン・シュタウプの辞書も同じ間違いをしているから、このマチガイの元凶はOXFORDのThe OXFORD Companion to Classical Literatureなんでしょう、たぶん。
まぁ、バトラコミュオマキア自体それほど有力な文献では決してないから、些細な間違いといえなくもない(笑) 他には別の原テキストに従ったとも考えられますが、あんなマイナーな物語にそれほど多くの写本があるとも思えないなぁ(苦笑)
下に挙げる"OXFORD Companion to Classical Literature"を基に編者が取捨選択して日本語 に直したもの。 ペラペラとめくってフンフンと判った気分になるにはいい本です。 見出し語がラテン語になっているので、神話以外のこと(例えば「動物」とか「星座」とか) を調べるときには、一々ラテン語で見出しを見なくてはイケナイのが難点(笑) 巻末に付いているギリシア・ローマ地図はタネ本にはなくて便利。
上に挙げた「ギリシア・ローマ古典文学参照辞典」のタネ本。 見出し語は英語なので、こっちの方が調べやすいのはどうして(苦笑)?? でも、本文も当然英語だから本文を読み出すと詰まってしまう(自爆) 記述は平易で読みやすく、それなりの分量なので調べ進むにはいい本。 でも、出典リストとかはないので、ウラを取ろうとすると苦労する本(笑)
ペーパーバックとハードカバーの2種類あり、ペーパーバックには巻末に地図が付いていない。 ハードカバーにはアウグスチン・シュタウプのよりは簡略だが地図が付いている。
記載されている内容に対する出典リストがある程度あるので便利。 見出し語は英語。 本文も当然英語。 ウラを取るために出典を調べるには重宝します。
知らない間に3rd editionが出てしまい、どこから購入資金を捻出しようかと考え中(笑)
ここでは、a)辞書ではなくb)ギリシア・ローマ時代に書かれたものの翻訳ではないものを 解説書というカテゴリーでくくることにします。
異説などに詳しい老人が、神話に興味をもつ人に語りかけるような口調で書かれた本。 巻末に詳細な出典リストが付いてはいるのですが、ときどき誤植とおぼしきリストがあるので注意が必要(笑)
恐らく、大多数の日本人がイメージする「ギリシア神話」の物語って、この本に書かれているような内容なのではないでしょうか?? ローマ時代以降の恋愛や変身譚に多くのページが割かれています。 でも、これって「ギリシア」神話ではないような気がする(苦笑)
私が読んだはじめてのギリシア神話の本。
対象が小学生上級以上とあるけど、私が読んだのは中学2年頃だったと思います。 山室 静という人は、元々北欧文学のヒトだと思っていたのに、ギリシア神話を書いているのがチョッピリ意外。
基本的に「子供向け」なので、ローマ時代にラテン語で書かれたアプレイウスの「黄金のロバ」の半分以上を占める物語が初出の「アモールとプシューケー」が「エロースとプシケー」として載っていても「ギリシア」神話ではないと目くじら立ててはイケマセン(笑)
ヒューギーノスと偽エラトステネースの星座に関する著作を、星座名ごとに項目に分けて訳出し、コメントを加えたもの。 星座物語について調べるときに便利。
「食卓の賢人たち」の作者としてのみ知られる。 集まった人間が、そのときどきに出てきた料理や話の流れに応じて料理の材料、調理法、宴会の作法、自然科学的な興味、哲学的な興味など多岐にわたる雑談を繰り返す。 アピーキウスがレシピ集であるのに対して、アテーナイオスは料理の材料などをとりあげてはいるものの、参加者同士の議論が中心になっている。 当時の食生活を知る上で非常に興味深い内容。
また、参加者たちは多くの引用を行っており、失われた中喜劇などの断片の宝庫としても興味深い。
アテーナイオスの抄訳。
こちらは全訳を目指したシリーズ。 全5分冊の予定で、現在(2001年1月)1~3巻が出ている。
アピーキウスはローマ時代の有名な食通といわれ、ギリシア/ローマ世界で現存しているレシピ集としては最古のものと言われています。 この本に収録されているレシピの中には明らかにギリシア時代から受け継がれたと思われるレシピもあり、当時の食事の内容を知る上で貴重な資料となっている。 しかし、あきらかにアキーピウスが生きた時代よりも後世のトピックを盛りこんだレシピもあり、ここでのアピーキウスは叙事詩におけるホメーロスのように食道楽の代表として受けとめられていたのかもしれません。
比較的新しい翻訳。 巻末に付いている食文化およびレシピに関する参考文献が載っているのが面白い。 逆に、本文に対する脚注は必要最小限でしかない。
本文にはいる前に、基本調味料であるガルム(またはリクヮーメン)とワインなどについてのある程度まとまった考察があり、本文の内容を十分に理解しようと思った場合には貴重。 その他の本文に対する脚注はそこそこ。 本サイトで採用した訳語「勤勉な料理人」はこちらの訳本の訳語。
3大悲劇詩人の現存作品はもちろんのこと、群小詩人の断片も収録しているのが 興味深い。 もちろん、3大悲劇詩人の断片も収録されており、そういった断片から全体像を勝手に想像してみるのも面白いかもしれません。
古典喜劇作家であるアリストパネースの作品を上下2分冊で収録している。 ローマ時代の人プルータルコスなどには中喜劇に比べて評価の低いアリストパネースではあるが、現代では十分に評価されているようです。 もっとも、ある程度まとまった量の作品が現存している喜劇作品が彼によるものくらいしかないというのも事実らしい。
ウラを返せば、それぞれの時代にそれなりの評価があったこそ現存する作品が ある程度ある、ともいえる。
言わずと知れた古代ギリシア叙事詩の嚆矢。 現代では「イーリアス」と「オデュッセイアー」の作者として想定される人間像というのが正しいホメーロス像なのかもしれない。 古代においては、ホメーロス=叙事詩人という公式が成り立っていたらしく、明らかに他の作者によると思われる作品もホメーロスの名を冠して伝えられていたりする。 その様な例としてはホメーロス(風)讃歌として知られる讃歌群が比較的有名。
個人的に青臭い思い出の強い本(笑) 高校生のときに「神統記」を読みたくてしかたがなかった私はイロイロと翻訳を探していました。 高校には筑摩書房の文学全集があり、その中に収録はされていたのですが、当時すでに絶版でした。 仕方なく『学校で英語を習っているんだから英訳でも』と思い始めた頃、Loeb版の英訳が見つかってしまい3,4時間本屋で悩んだあげく購入。 その半年後くらい後、まだ英文がよく判らなくて唸っているときにこの訳本が出てしまって人生をチョットだけスネてしまいました(笑)
そんな理由からか、私個人としてはホメーロスよりもヘーシオドスの方がシックリくることが多いという、ど~でもいい結果となってしまいました。
神統記と並んでヘーシオドスの作とされるもの。 パンドーラーの甕を含む所謂5時代説話はこちらの方に語られている。 内容は(実在のほどは確かではないが)怠惰で不実な弟ペルセスに対して労働の尊さを説きつける形で進められています。
岩波文庫によるこの翻訳では付録として「ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ」が収録されています。 恐らく、実在の叙事詩人としてこの2人の詩人が実際に詩作の技量を競ったことはないと考えられますが、古代人にとっては夢の競演という意味で十分な娯楽として成り立っていたのかもしれません。 ノリとしては「マジンガーZ vs. デビルマン」とかMarvel-DC Crossover Comicsのようなモンなんでしょう。
比較的長い讃歌4篇を含む33の讃歌から構成され、その成立年代もまちまちのようです。 しかし、ホメーロスの後裔を名乗る「ホメーリダイ」と呼ばれる人々がいたことは確からしく、恐らくはそういった人たちによって語られてきたものなのかもしれません。
ホメーロス(風)讃歌の中でも特に大部の「デーメーテール讃歌」、 「アポローン讃歌」、「ヘルメース讃歌」、「アプロディーテー讃歌」 を訳出したもの。
こちらは33ある全ての讃歌の翻訳。 わずか数行の讃歌についても翻訳し、解説してあるのが興味深い。
スミュルナのクイントゥス(QUINTUS SMYRNAEUS)とも呼ばれる叙事詩人。 紀元3世紀ないし4世紀ころの人。 ヘクトール没後のトロイア戦争のなりゆきを歌った作品があり、「ホメーロス以降」とか「ホメーロスの続き」と呼ばれる作品がある。
ギリシア詞華集の抄訳。 現在では平凡社ライブラリーと水声社という出版社の版があるようです。
ローマ時代の作品。 有名な「エロースとプシュケー」の話は、この作品の半分以上を占める『アモールとプシューケー』の挿話が初出。 物語の冒頭で主人公がロバに変身してしまい、最後に地母神の秘儀をうけて元の人間に戻ることから「変身物語」と呼ばれることもあるが、このタイトルはオウィディウスの作品の方が有名。
パウサニアースと並んでギリシア地誌としては有名な作品。 国内の書籍は絶版になるスピードが速いので、見つけたときに買うのは買うのだが、まだロクに眼を通してなかったりする(汗) 脚注を別売りとしているのだが、脚注を作成中に訳者が鬼籍に入られてしまった。
パウサニアースは紀元2世紀頃の人で、ギリシア神話のイメージをそのまま受け入れるには 常識人すぎたようです。 いわゆる「神話の合理的解釈」を多く試みているのですが、そのいくつかは現代人の我々の目から見た場合、必ずしも合理的な解釈とは思えないのがほほえましい(笑) もちろん、神話のイメージそのままよりは遥かに合理的ではあるのですが、そのような行動や現象をあんまり考えたくないな、という意味で。
パウサニアースは神像などに添えられた文章を丁寧に読み、(所々読み違えている可能性を否定できないとはいえ)非常にマイナーな伝承を伝えているのが興味深い。
岩波文庫のは抄訳版。 訳注は非常によくできている。 固有名詞にはギリシア語を音訳したルビが振ってあるので、ギリシア語の辞書を片手に意味を調べてみるのも面白い。
龍渓書舎のは全訳。 岩波文庫版には収録されていない個所が日本語で読めるのはとってもシヤワセ。
ディオドーロスの神話に関係した部分だけを訳出した抄訳。 ストラボーンの脚注作成を訳者の方が病気のため断念しなければならなかったこと、それを埋めるために訳者に残された労力で本書をまとめ上げられた経緯が書かれています。 ストラボーンの脚注が出版されなかったのは非常に残念ですが、訳者のご冥福を祈ると共に、本書が出版されたことを素直に喜びたいと思います。
それだけでは分量が少なすぎると判断されたのか、ポンポニウス・メラの「世界地理」とプルータルコスの「エジプト神イシスとオシリスの伝説について」がついています。 「エジプト神イシスとオシリスの伝説について」は倫理論集の一つとして岩波文庫(青 664-5)からも別の翻訳がありますが、メラは本邦初訳。
恐らく「神話」の理解としてはあまり参考にはならないと思います。 それでもプラトーンなどは自分の哲学的アイディアを表現するために自ら架空の話を作ることが多く、アテーナイオスの中の列席者のようにプラトーンによる対話篇の対話そのものがフィクションであるという批判もあります。 古代ギリシアの人々は、現代の我々よりもかなり神話に対して宗教的に密接した生活を送っていたようであり、その考え方などにも影響を与えたかもしれない、程度の興味で読むようにしています。
ローマ時代の博物学者。 ベスビオス火山の噴火を観察中に噴火に巻き込まれ死亡。 当時の知見を集約した「博物誌」が有名。
国内では「プルターク英雄伝」として有名な対比列伝。 ギリシアの人物とローマのそれに対応すると思われる人物についての伝記を載せ、多くの場合両者の比較をまとめている。 ギリシア/ローマでは「伝記」というのは娯楽作品であり、あまり史実との整合性を細かく評価しなかったという傾向があるようです。 現在の感覚でいうと「伝奇小説」といった感じの方が強いかもしれません。
にもかかわらず、この対比列伝は先人たちの多くの文献を参照しながら書かれており、内容全てを無批判に信用することはできないとはいえ興味深い資料となっています。
ローマ時代の詩人。
「変身」を中心としたモチーフにとり、ギリシア・ローマ神話の多くの物語を収録している。 ごく個人的な好みからいうと、ローマの作品は非常に甘ったるく、運命に涙するばかりでギリシアの作品に登場する人物ほど毅然とした態度がないのが不満。 (でも、ホメーロスのイーリアスのほとんどの部分は殺伐としすぎて、これもまた個人的には辟易としてしまうのですが(苦笑)) ただし、これは非常に個人的な感受性に基づくものであり、この作品が過去に得てきた大きな評価を覆すようなものでは決してありません。
主に系譜に関する興味(古代ギリシアでは重要な興味の一つであったらしい)を説明するために書かれたもの。 記述は単調で退屈ではあるけれども、系譜を調べるには便利。 比較的古い資料の参照が多いようで、そういった意味からも興味が深い。 Loeb Classical LibraryからFrazerによる英訳も出ている。 高津春繁による岩波文庫の翻訳では、詳細な出典リストはFrazerの訳を参照のこととして自ら出典をリストしていないので、英訳もあると便利。
ヒュギーノスの神話集は、アポロドーロスのものとは異なり当時の一般教養としての神話を網羅的に収録したタネ本のようなものだったようです。
ヘーシオドスの神統記の件以来、世の中をスネてしまった(笑)私は邦訳がないと、このLoeb Classical Libraryに頼るようになっています。 比較的豊富なアイテム、ギリシア語と英語との対訳、OXFORD Classical Textに比べて、若干安い価格設定などが特徴。 もっとも、OXFORD Classial Textはギリシア語原文だけですが。
反面翻訳の古さや細かいミスを指摘されることもあるようです。 しかし、全体としてみた場合、入手が比較的ラクでそれなりのアイテム数を誇るこのシリーズは非常に魅力的で、邦訳のあまりない重要な文献のウラ資料として役立っています。 ナゼ「ウラ」なのか??というと、英語で書かれた本文を通読するのは私には大きな苦痛ですので、必要そうな部分をINDEXでアタリをつけ、スポットで読むという使い方しかしていないからです(自爆)
東京近郊での入手は銀座の教文館がオススメ。