練習 4.4
課題文
ἀναφαίρετον ὅπλον ἡ ἀρετή.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ἀναφαίρετον | ἀναφαίρετος | 形容詞 | 中性/単数/主格 | 取り上げられることのない |
ὅπλον | ὅπλον | 中性名詞 | 単数/主格 | 道具, 武器 |
ἡ | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/主格 | ἀρετήにかかる |
ἀρετή | ἀρετή | 女性名詞 | 単数/主格 | 徳 |
脚注
ὅπλον, ここでは単数でも「武器」の意 (この語が「武器」の意となるのは主に複数のときで、単数のときは「道具」の意味で使われることが多い)。
出典と翻訳
テキストではἈντισθένηςを挙げている。 これは恐らくはディオゲネース・ラーエルティオス, 『ギリシア哲学者列伝』, 6. 1. 12に出てくる彼の言葉とされるもの
Ἀναγράφει δ᾽ αὐτοῦ καὶ Διοκλῆς ταυτί. τῷ σοφῷ ξένον οὐδὲν οὐδ᾽ ἄπορον. ἀξιέραστος ὁ ἀγαθός· οἱ σπουδαῖοι φίλοι· συμμάχους ποιεῖσθαι τοὺς εὐψύχους ἅμα καὶ δικαίους· ἀναφαίρετον ὅπλον ἡ ἀρετή· κρεῖττόν ἐστι μετ᾽ ὀλίγων ἀγαθῶν πρὸς ἅπαντας τοὺς κακοὺς ἢ μετὰ πολλῶν κακῶν πρὸς ὀλίγους ἀγαθοὺς μάχεσθαι. προσέχειν τοῖς ἐχθροῖς· πρῶτοι γὰρ τῶν ἁμαρτημάτων αἰσθάνονται. τὸν δίκαιον περὶ πλείονος ποιεῖσθαι τοῦ συγγενοῦς· ἀνδρὸς καὶ γυναικὸς ἡ αὐτὴ ἀρετή: τἀγαθὰ καλά, τὰ κακὰ αἰσχρά· τὰ πονηρὰ νόμιζε πάντα ξενικά.
なお、ディオクレスもまた、彼の言葉として次のようなものを書きとめている。
賢者には、奇異なことも解決できないことも何ひとつない。
善き人々は愛されるに値する者である。
すぐれた(有徳な)人びとこそ友である。
胆力があり、かつまた正しい人を戦友とすること。
徳は奪い取られることのない武器である。
多数の劣悪な連中を味方にして、少数の優れた人たちを相手に戦うよりは、少数の優れた人びとを味方にして、劣悪な者たち全部を相手に戦うほうがましである。
敵に対しては注意を怠らぬこと。
なぜなら、こちらの落ち度に真っ先に気づくのは彼らであるから。
身内の者よりは、むしろ正しい人を重んずること。
徳は、男子のそれも女子のそれも同じである。
善いことは美しく、悪しきことは醜い
邪悪なことはすべて自分には関係のないこととみなせ。
(加来彰俊 訳)
の中から採られたと思われる。
メモ
文の基本的な構造は、ἀρεθήはὅπλονである、というもの。 そこにἀναφαίρετονという形容詞が(性, 数, 格が一致している)ὅπλονにかかる。 つまり、「ἀρεθήはἀναφαίρετοςなὅπλονである」、というのが文意。
ἀναφαίρετοςという長たらしい形容詞は、α(否定辞, 母音で始まる語が続くため、νが挿入されている)と、ἀπό(分離を表す, 気息を伴った母音が続くため、語末の母音が落ち、πが帯気音のφになっている)と、αἱρέω(つかむ、奪う)という動詞からできている。 つまり、何かをつかんで元の場所から引き離すことができないような、というニュアンス。