練習 6.7
課題文
πολυμαθία νοῦν ἔχειν οὐ διδάσκει.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
πολυμαθία | πολυμαθία | 女性名詞 | 単数/主格 | 博学 |
νοῦν | νοῦς (νόος) | 男性名詞 | 単数/対格 | 心, 理性 |
ἔχειν | ἔχω | 動詞 | 不定詞/現在/能動態 | 持つ |
οὐ | οὐ | 否定辞 | この語は変化しない | ~ない |
διδάσκει | διδάσκω | 動詞 | 三人称/単数/現在/直説法/能動態 | 教える |
脚注
特になし
出典と翻訳
Ἡράκλειτος, 断片40 DK
これをヘーラクレイトスの言とするものは、主に二つある。
ディオゲネース・ラーエルティオス, ギリシア哲学者列伝, 9. 1. 1
μεγαλόφρων δὲ γέγονε παρ᾽ ὁντιναοῦ καὶ ὑπερόπτης, ὡς καὶ ἐκ τοῦ συγγράμματος αὐτοῦ δῆλον, ἐν ᾧ φησι, "πολυμαθίη νόον οὐ διδάσκει· Ἡσίοδον γὰρ ἂν ἐδίδαξε καὶ Πυθαγόρην, αὖτίς τε Ξενοφάνεά τε καὶ Ἑκαταῖον." εἶναι γὰρͅ ιἓν τὸ σοφόν, ἐπίστασθαι γνώμην, ὁτέη ἐκυβέρνησε πάντα διὰ πάντων."
彼は誰にもまして気位が高く、尊大な男であった。
そのことは彼の書物からも明らかであるが、そのなかで彼は次のように述べているのである。
「博識は見識(ノオス)を教えはしない。
もし教えたとしたら、それはヘシオドスにもピュタゴラスにも、さらにはクセノパネスやヘカタイオスにも教えたであろうから。」
なぜなら、「智(ト・ソポン)はただ一つ。
すべてのものを通してすべてのものを操る(万有の理法の)意図を知ることなのだ」からと。
(加来彰俊 訳)
アテーナイオス, 食卓の賢人たち, 第13巻 610b
τοσαῦτα τοῦ Μυρτίλου ἑξῆς καταλέξαντος καὶ πάντων αὐτὸν ἐπὶ τῇ μνήμῃ θαυμασάντων ὁ Κύνουλκος ἔφη · ‘
πουλυμαθημοσύνης, τῆς οὐ κενεώτερον οὐδέν,
’ ‘ἵππων ἔφη ὁ ἄθεος. ἀλλὰ καὶ Ἡράκλειτος ὁ θεῖός φησι· ‘πουλυμαθίη νόον ἔχειν οὐ διδάσκει.’ καὶ ὁ Τίμων δὲ ἔφη·
ἐν δὲ πλατυσμὸς
πουλυμαθημοσύνης, τῆς οὐ κενεώτερον ἄλλο.
’”
ミュルティロスがこういうことを次々に並べてみせて、一同の者がその記憶力に感心していると、キュヌルコスが言った、
「博学多識、これほど空しいものはない
とあの神を知らないヒッポンが言っているな。
そればかりか、神のごときヘラクレイトスも、『知識をたくさんもったとて、理解の仕方を教えられるわけではない』と言っている。
そしてティモンは言った、
その中にあって
博識を誇ること、これにまさって空しいことはない。
(柳沼重剛 訳)
メモ
πολυμαθίαはδιδάσκωしない、というのが基本構造。 どのような内容をδιδάσκωしないのかというと、νοῦν ἔχεινを、というのが文意。 このとき
- νοῦςがἔχωすること
- νοῦςをἔχωすること
の二通りが考えられるが、νοῦνを不定詞の主語と考えた場合は、νοῦςが何をἔχωするのか、がわからなくなる。 したがって、νοῦνは不定詞ἔχεινの直接目的語と考える方がよさそう。 以上を考え合わせると、πολυμαθίαはνοῦςをἔχωすることをδιδάσκωしない、というのが文意。