練習 11.5
課題文
ὁ ἄνθρωπος φύσει πολιτικὸν ζῷον.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ὁ | ὁ | 定冠詞 | 男性/単数/主格 | にかかる |
ἄνθρωπος | ἄνθρωπος | 男性名詞 | 単数/主格 | 人間 |
φύσει | φύσις | 女性名詞 | 単数/与格 | 自然, 本性 |
πολιτικόν | πολιτικός | 形容詞 | 中性/単数/主格 | 市民の, 政治の |
ζῷον | ζῷον | 中性名詞 | 単数/主格 | 動物 |
脚注
特になし。
出典と翻訳
アリストテレース, 政治学, 1253a 3
メモ
φύσιςが本課の学習項目である母音幹の第三変化名詞。 この与格は限定の与格(P. 37, §58. 参照)。 ここでは「φύσιςという点においては」と副詞的に考えると理解しやすいように思える。
基本構造は簡単で、「ἄνθρωποςはπολιτικὸν ζῷονである(ἐστιを補って考える)」というもの。 これに与格で表されるφύσειを付け加えて、「ἄνθρωποςはφύσιςという点においては、πολιτικόςなζῷονである」というのが本課題文の文意と思われる。
「人間は社会的な動物である」という訳でよく知られているが、πολιτικόςを単純に「社会的な」と訳していいのかどうかは、少々疑問が残る。 ギリシア人にとってのπόλιςは、現代の私たちが認識している「社会」とは必ずしも一致しないように思えるから。
そこに、「その本質という一点においては」と限定の与格(限定の対格がある程度の範囲を持つのに対して、限定の与格はある「一点で」とかなり限定の範囲が狭い特徴を持つ)で副詞的に関わってくる語を含めて、全体の内容を味わうのが楽しいのではないかと思えてならない。