練習 12.8

課題文

ταῦτα ἀγαθὸς ἕκαστος ἡμῶν, ἅπερ σοφός, ἃ δὲ ἀμαθής, ταῦτα δὲ κακός.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
ταῦτα οὗτος 指示代名詞 中性/複数/対格 それ, その
ἀγαθός ἀγαθός 形容詞 男性/単数/主格 よい, 優れた, 勇敢な
ἕκαστος ἕκαστος 形容詞 男性/単数/主格 おのおのお
ἡμῶν ἐγώ 人称代名詞 男性(女性)/複数/属格 脚注参照
ἅπερ ὅσπερ 関係代名詞 中性/複数/対格 まさに~であるところのもの
σοφός σοφός 形容詞 男性/単数/主格 賢い
ὅς 関係代名詞 中性/複数/対格 ~であるところのもの
δέ δέ 小辞 この語は変化しない メモ参照
ἀμαθής ἀμαθής 形容詞 男性/単数/主格 無学な, 無知な
ταῦτα οὗτος 指示代名詞 中性/複数/対格 それ, その
δέ δέ 小辞 この語は変化しない メモ参照
κακός κακός 形容詞 男性/単数/主格 悪い, 劣った

脚注

文中の対格はすべて限定の対格 (Cf. §58)
ἡμῶν 「われわれの」, (Cf. §83)
ἀμαθής 「無知な」(男性/単数/主格, Cf. §85.)

出典と翻訳

プラトーン, ラケース, 194d

メモ

ταῦταが指示代名詞οὗτοςの変化形であることを理解するのが、本課題文の要旨と思われる。 初級文法で読むには、構造が複雑過ぎない??とも思うが。

脚注にもあるように、対格はすべて「限定の対格」(P. 37, §. 58)。 ここで対格として解釈できるのは、指示代名詞ταῦταが二つ、関係代名詞ἅπερおよびで、すべて中性/複数。 これらを全て「限定の対格」として読んでいく。

δέが二つあるのが少し気になる。 ここでのδέは、対照を表しているように思える。 つまり

  1. σοφόςἀμαθής
  2. ἀγαθόςκακός

である。 対照のニュアンスをうまく訳文に入れることは、難しいかもしれない。

日本語でも冗長な繰り返しは嫌われるが、それは古典ギリシア語でも同じ。 むしろ、古典ギリシア語の方が同じ文章の繰り返しを嫌っているかもしれない。 そのことが、この文章の印象を困難なものにしていると思える。 次のように語を挿入し、コンマで区切られた節に通し番号を打って考えると、文意が取りやすいのではないだろうか。

ταῦτα ἀγαθὸς ἕκαστος ἡμῶν ἐστίν1, ἅπερ σοφός ἕκαστος ἡμῶν ἐστίν2, ἃ δὲ ἀμαθής ἕκαστος ἡμῶν ἐστίν3, ταῦτα δὲ κακός ἕκαστος ἡμῶν ἐστίν4.

  1. われわれのうち(ἡμῶν)、それぞれ(ἕκαστος)がそれらのことどもの点で(ταῦτα) ἀγαθός (である)
  2. (われわれのうち、それぞれが) σοφός (である)というまさにそのことどもにおいて(ἅπερ)
  3. (われわれのうち、それぞれが) ἀμαθής (である)ということどもにおいて()
  4. (われわれのうち、それぞれが、それらのことどもにおいて) κακός (である)

節1および2と、節3および4が対称になる構造になっている。 そのため、関係代名詞の先行詞である節4のταῦταが、関係代名詞よりも後方に配置されているというトリッキーな文になっている。

以上をまとめると、「われわれのうち(ἡμῶν)、それぞれが(ἕκαστος) σοφόςであるというまさにそのことどもにおいて、(それぞれが) ἀγαθόςなのであり、ἀμαθήςということどもにおいてはκακόςなのである」くらいが本課題文の文意と思われる。


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