練習 14.2

課題文

μία χελιδὼν οὐκ ἔαρ ποιεῖ.

語彙

文中の語 見出語形 品詞 変化形 主な意味
μία εἷς 数詞 女性/単数/主格 1
χελιδών χελιδών 女性名詞 単数/主格
οὐκ οὐ 否定辞 この語は変化しない ~ない
ἔαρ ἔαρ 中性名詞 単数/対格
ποιεῖ ποιέω 動詞 三人称/単数/現在/直説法/能動態 作る, する

脚注

特になし。

出典と翻訳

不明。

ただし、アリストテレース『ニーコマコス倫理学』1098a

μία γὰρ χελιδὼν ἔαρ οὐ ποιεῖ, οὐδὲ μία ἡμέρα·

まことに、一羽の燕が、また或る一朝夕が春をもちきたすのではなく
(高田三郎 訳)

と書かれた部分がある。 これは卓越した特質を持っていても反復や継続することの重要性を説いたもので、この表現に至るまでに

だが、人間の機能は、「ことわり」に則しての、ないしは「ことわり」を欠いていないところの、プシュケーの活動であるとするならば、そうしてまた、これこれのものの機能とは同類の機能であるということを認めるならば—たとえば琴弾きの機能はすぐれた琴弾きの機能に同じく、その他いかなる場合について見てもまったくこれと同様であり、ただ、性能の優秀ということが後者の機能には付加されるのであって、すなわち、琴弾きの機能は琴を弾ずるにあり、すぐれた琴弾きのそれはよく弾ずるにある—。 もし以上のごとくであるとするならば、〔人間の機能は或る性質の生、すなわち、魂の「ことわり」を具えた活動とか働きとかにほかならず、すぐれた人間の機能は、かかる活動とか働きとかをうるわしく行なうということに存するのであって、すべていかなることがらもかかる固有の卓越性アレテーに基づいて遂行されるときによく達成されるのである。 もしかくのごとくであるとするならば、〕「人間というものの善」とは、人間の卓越性アレテーに則しての、またもしその卓越性が幾つかあるときは最も善き最も究極的な卓越性に則しての魂の活動であることとなる。

のみならずまた、それは究極の生涯においてでなくてはならない。 まことに、一話の燕が、また或る一朝夕が春をもちきたすのではなく、それと同じように、至福なひと・幸福なひとをつくるもは一朝夕や短時日ではないのである。
(高田三郎 訳)

のように語られている。

メモ

ποιέωが母音融合動詞なので、ποιεῖの形を正しく把握することが、本課題文の主旨と思われる。 語形に関しては、P.55, §79.の変化表のうちφιλῶ (φιλέω)の変化を参照のこと。

数詞μίαは第36課(P.145, §191.)で学ぶ。 ここでは「1」を意味するεἷςの女性/単数/主格(「1」なんだから、当然「単数」一択)。 他に女性/単数/主格で表されているのは「ツバメ」を意味するχελιδώνなので、ここではχελιδώνを修飾して「εἷςχελιδών」であるとわかる。

中性名詞ἔαρは主格と対格が同形なので、こちらが主語と考えるかもしれない。 しかし女性名詞χελιδώνは主格一択なので、こちらのχελιδώνを主語と読む方が自然。 更に動詞ποιέωが作るべき対象を対格として要求するハズなので、やはりここでのἔαρは対格として読むのがよい。

否定辞οὐを「~ない」と解するか、「~というわけではない」と解するかは、読む人の好みなのだろうと思う。

まとめると、「εἷςχελιδώνἔαρποιέωしない(または、するわけではない)」くらいの内容が本課題文の文意と思われる。


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