練習 14.6
課題文
ἀπὸ τῆς Νέστορος γλώττης, ὥσπερ μέλι, ὁ λόγος ἀπέρρει.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
ἀπό | ἀπό | 前置詞 | この語は変化しない | (属格)から |
τῆς | ὁ | 定冠詞 | 女性/単数/属格 | γλώττηςにかかる |
Νέστορος | Νέστωρ | 男性名詞 | 単数/属格 | ネストール(人名) |
γλώττης | γλῶττα | 女性名詞 | 単数/属格 | 舌 |
ὥσπερ | ὥσπερ | 副詞 | この語は変化しない | ちょうど~のように |
μέλι | μέλι | 中性名詞 | 単数/主格 | (蜂)蜜 |
ὁ | ὁ | 定冠詞 | 男性/単数/主格 | λόγοςにかかる |
λόγος | λόγος | 男性名詞 | 単数/主格 | 言葉 |
ἀπέρρει | ἀπορέω | 動詞 | 三人称/単数/未完了/直説法/能動態 | 流れる |
脚注
ῥέω「流れる」のような2音節の-έω動詞は、ῥέω(一人称/単数/現在)、ῥεῖς(二人称/単数/現在)、ῥεῖ(三人称/単数/現在)、ῥέομεν(一人称/複数/現在)、ῥεῖτε(二人称/複数/現在)、ῥέουσι(ν)(三人称/複数/現在)のように、ει以外に融合しない。 このことはἀπορρέωのような合成動詞においても同様である。
出典と翻訳
不明。
メモ
ἀπέρρειの形を正しく把握することが、本課題文の主旨と思われる。 この動詞はἀπόとῥέωの合成語だから、ἀπέρρειは恐らくἀπέρρειのように色分けできる。 ここで加音(前綴りであるἀπόの末尾οが加音とおぼしきεに置き換わっている)が見えるので、本課の範囲内では未完了。
だとすれば、語末がειとなりえそうなのは、語幹末尾の母音εと語幹形成母音であるεが母音融合してειになり、人称語尾がないと考えられる。 するとP.22, §36.の副時称の人称語尾の表から、三人称/単数であると考えられる。 a) 加音がついて、b) 現在と同じ語幹を持ち、c) 時称接尾辞がないので、これは未完了。 つまりこの形は、三人称/単数/未完了/直説法/能動態。
前置詞ἀπόが要求している属格は、定冠詞τῆςがかかっているγλώττης。 男性/単数/属格のΝέστοροςはこの定冠詞と女性名詞のブロックに囲まれ、限定的位置(P.12, §21.)の形容詞のような位置にあることに注意。
まとめると、「Νέστωρのγλῶτταから(ἀπό)、ちょうどμέλιのように(ὥσπερ)、ὁ λόγοςがἀπορρέωしていた」くらいの内容が本課題文の文意と思われる。