§21. 形容詞の位置による意味の違いと繋辞
形容詞の位置による意味の違い
形容詞は修飾する名詞との位置関係で意味が異なる。 位置関係の分類は二種類あり
である。
限定的位置
形容詞(B)が名詞(A)を修飾する「BなA」といった意味となる位置関係。
- 定冠詞と名詞の間に形容詞が位置する場合
- ὁ ἀγαθός ἵππος
- 形容詞が定冠詞を伴って、定冠詞と名詞のペアの前または後ろに位置する場合
- ὁ ἀγατὸς ὁ ἵππος
- ὁ ἵππος ὁ ἀγαθός
- 定冠詞を伴わない名詞の後ろに、定冠詞を伴った形容詞が位置する場合(稀用)
- ἵππος ὁ ἀγαθός
これらの位置関係を、形容詞が「限定的な」位置をとっている、という。 上記例では、「よい(ἀγαθός)馬(ἵππος)」。
述語的位置
形容詞(B)が繋辞的動詞 で名詞(A)とつながれていて(またはそう想定され)「A=B」といった意味となる位置関係。
- 形容詞が定冠詞と名詞のペアの外に定冠詞を伴わずに位置する場合
- ὁ ἵππος ἀγαθός
- ἀγατὸς ὁ ἵππος
これらの位置関係を、形容詞が「述語的な」位置をとっている、という。 上記例では「その馬(ὁ ἵππος)はよい(ἀγαθός)」。 述語的な位置をとっている場合、ピリオドを打てば、それだけで文として完結することができる。
位置関係が不明な場合
定冠詞がなく、位置関係が不明な場合(例えばἵππος ἀγαθόςやἀγαθὸς ἵππος)は文脈から判断するしかない。
位置関係に関する注意事項
古典ギリシア語では修飾する形容詞と、修飾される名詞の性, 数, 格が一致する必要がある。 このため語順に関してはかなりの自由度があり、名詞と形容詞が必ずしも隣接しているとは限らない。
また限定的位置 で定冠詞と名詞の間に入ってくるのは形容詞とは限らず、前置詞句などが挿入される場合もある。 このような場合も、挿入された句が名詞を修飾しているように読むと意味が通りやすいように感じている。
繋辞的動詞
繋辞(copula) とは連結詞とも訳され、ある要素と他の要素の関係を表わしたり、それらをつなぎあわせたりする語。 英語のbe動詞が代表的な例。 SMYTHの§917 および§918も参照のこと。
古典ギリシア語でbe動詞に相当するのはεἰμί。
他に
主語と述語が繋辞的動詞でつながれている(ただし、繋辞的動詞は省略されることが多い)文がcopulative sentense。 このとき述語が形容詞であるならば、述語的位置 をとっている。