§28.
ω動詞の直説法/現在/能動態および直説法/未来/能動態
このセクションではπαιδεύω(教育する)を例に、ω動詞の直説法/現在/能動態および直説法/未来/能動態の変化を学ぶ。
直説法/現在/能動態は
語幹+語幹形成母音+人称語尾(本時称)
直説法/未来/能動態は
語幹+時称接尾辞+語幹形成母音+人称語尾(本時称)
によって作られている。 能動態および中動態(25課参照)/未来の時称接尾辞はσである。 現在が時称接尾辞をとることはない。
ただし、ω動詞の能動態は、人称語尾が明確に分離できないことも少なくない。 このときは複合された語尾として色分けしている。
直説法/現在/能動態
単数 | 一人称 | παιδεύω |
二人称 | παιδεύεις | |
三人称 | παιδεύει | |
双数 | 二人称 | παιδεύετον |
三人称 | παιδεύετον | |
複数 | 一人称 | παιδεύομεν |
二人称 | παιδεύετε | |
三人称 | παιδεύουσι(ν) |
直説法/未来/能動態
単数 | 一人称 | παιδεύσω |
二人称 | παιδεύσεις | |
三人称 | παιδεύσει | |
双数 | 二人称 | παιδεύσετον |
三人称 | παιδεύσετον | |
複数 | 一人称 | παιδεύσομεν |
二人称 | παιδεύσετε | |
三人称 | παιδεύσουσι(ν) |
語幹に関する注意
動詞の語幹は、時称によって異なる形をとることがある。 παιδεύωの場合は、たまたま現在と未来で同じ語幹をとっている。 しかしεὑρίσκω(現在)とεὑρήσω(未来)のように、両者で異なる語幹の形をとる動詞もあり、現在と未来で必ず同じ語幹をとるとは限らない。
後退的なアクセント
アクセント規則の許す範囲内で、アクセントが語末から離れるような位置に置かれるような傾向を「後退的(recessive)なアクセントをとる」という。 動詞の変化形(分詞や不定詞を含む)では原則的に後退的なアクセントをとるが、原則に従わないものも若干ある。
名詞や形容詞であっても、後退的なアクセントをとるものがあり、合成語の場合は特にその傾向が強いように感じる。
付加音のν
三人称/複数の語尾に見られるパーレン(parenthesis, 丸括弧)でくくられたνは、次に(気息があっても、なくても)母音で始まる語が続くときや、語が文末に置かれるときなどに多く現われる(これらは「必ず」ではないらしい)。 このようなνを「付加音のν(ν movable)」という。