パリス
Πάρις
Paris

概要

プリアモスヘカベーの子。 ヘレネーを奪い、トロイア戦争の発端となる。 アレクサンドロスとも呼ばれ、ホメーロス『イーリアス』の中でも、(恐らくは韻律上の都合から)パリスとアレクサンドロスの両方が使われる。

出自

父はプリアモス。 母はヘカベー

神話

誕生

プリアモスヘカベー第二子として生まれる ((偽)アポロドーロス, 『ギリシア神話』,3. 12. 5)。 パリスが生れる前に、ヘカベーは燃え木を生む夢をみる。 その燃え木の火が、だんだんと広がってトロイアの街全体を覆っていく、というものだった。 夢判断によって、それはトロイアにとって滅亡の原因となるるので、生れてくる子供は捨てるべきだ、と主張される。 これを主張した人物は諸説ある。

成長

パリスの審判

トロイア戦争での活躍

引用

アポロドーロス, 『ギリシア神話』, 3. 12. 5

γεννᾶται δὲ αὐτῇ πρῶτος μὲν Ἕκτωρ· δευτέρου δὲ γεννᾶσθαι μέλλοντος βρέφους ἔδοξεν Ἑκάβη καθ᾽ ὕπνους δαλὸν τεκεῖν διάπυρον, τοῦτον δὲ πᾶσαν ἐπινέμεσθαι τὴν πόλιν καὶ καίειν. μαθὼν δὲ Πρίαμος παρ᾽ Ἑκάβης τὸν ὄνειρον, Αἴσακον τὸν υἱὸν μετεπέμψατο· ἦν γὰρ ὀνειροκρίτης παρὰ τοῦ μητροπάτορος Μέροπος διδαχθείς. οὗτος εἰπὼν τῆς πατρίδος γενέσθαι τὸν παῖδα ἀπώλειαν, ἐκθεῖναι τὸ βρέφος ἐκέλευε. Πρίαμος δέ, ὡς ἐγεννήθη τὸ βρέφος, δίδωσιν ἐκθεῖναι οἰκέτῃ κομίσαντι εἰς Ἴδην· ὁ δὲ οἰκέτης Ἀγέλαος ὠνομάζετο. τὸ δὲ ἐκτεθὲν ὑπὸ τούτου βρέφος πένθ᾽ ἡμέρας ὑπὸ ἄρκτου ἐτράφη. ὁ δὲ σωζόμενον εὑρὼν ἀναιρεῖται, καὶ κομίσας ἐπὶ τῶν χωρίων ὡς ἴδιον παῖδα ἔτρεφεν, ὀνομάσας Πάριν. γενόμενος δὲ νεανίσκος καὶ πολλῶν διαφέρων κάλλει τε καὶ ῥώμῃ αὖθις Ἀλέξανδρος προσωνομάσθη, λῃστὰς ἀμυνόμενος καὶ τοῖς ποιμνίοις ἀλεξήσας , ὅπερ ἐστὶ βοηθήσας. καὶ μετ᾽ οὐ πολὺ τοὺς γονέας ἀνεῦρε.

彼女に最初にヘクトールが生れた。 第二の赤児が生れようとした時、ヘカベーは燃え木を生み、これが全市に拡がって焼く夢を見た。 プリアモスはこれをヘカベーより聞いて、息子のアイサコスを呼び寄せた。 というのは彼はの父メロプスより夢占いを教えられていたからである。 彼はその子が国の破滅になると言って、赤児を棄てるようにと勧めた。 そこでプリアモスは赤児が生れると、召使にイーデーに連れて行って棄てるように渡した。 召使の名はアゲラーオスと言った。 彼に棄てられた赤児は五日の間熊によって育てられた。 そしてアゲラーオスは赤児の無事なのを見出した時、それを拾い上げて連れ行き、パリスと呼んで自分の農場で自分の子として育てた。 美貌と力とによって衆に優れた若者となって、盗賊をうち退け、羊を守ったので、後アレクサンドロス綽名あだなせられた。 そして後暫くして両親を発見した。
(高津春繁 訳)

エウリーピデース, 『アンドロマケー』, 293-300

Χορός ἀλλ᾽ εἴθ᾽ ὑπὲρ κεφαλὰν ἔβαλεν κακὸν ἁ τεκοῦσά νιν μόρον πρὶν Ἰδαῖον κατοικίσαι λέπας, 295 ὅτε νιν παρὰ θεσπεσίῳ δάφνᾳ βόασε Κασάνδρα κτανεῖν, μεγάλαν Πριάμου πόλεως λώβαν. τίν᾽ οὐκ ἐπῆλθε, ποῖον οὐκ ἐλίσσετο δαμογερόντων βρέφος φονεύειν; 300
コロス(続き) さもあれ、パリスをば産みし母人 死の一撃もて、こうべを断ちしならば! イダ山が岩陰に住まわしめずに。 げに、神意を宿す桂樹が下、 カサンドラは叫びたるぞ—殺すべし! プリアモスが都にとりて、 大いなる破滅とならん— 訪わざりし人ありや、いずこの長老に、 懇願を惜しみしか—まがつ児を殺せ—と。 (松本克己 訳)

ヒュギーヌス, 神話集, 91話

XCI ALEXANDER PARIS
Priamus Laomedontis filius cum complures liveros haveret ex concubitu Hecubae Cissei siue Dymantis filliae, uxor eius praegnans in quiete uidit se facem ardentem parere ex qua serpentes plurimos exisse. id uisum omnibus coniectoribus cum narratum esset, imperant quicquid pareret necaret, ne id patriae exitio foret. postquam Hecuba peperit Alexandrum datur interficiendus, quem satellites misericordia exposuerunt ; eum pastores pro suo filio repertum expositum educarunt eumque Parim nominauerunt. is cum ad pubrem aetatem peruenisset, habuit faurum in deliciis ; quo cum satellites missi a Priamo ut taurum aliquis adduceret uenissent, qui in athlo funebri quod ei fiebat poneretur, coeperunt Paridis taurum abducere. qui persecutus est eos et inquisiuit quo eum ducerent ; illi indicant se eum ad Priamum adducere ‹ei›, qui uicisset ludis funebribus Alexandri. ille amore incensus tauri sui descendit in certamen et omnia uicit, fratres quoque suos superauit. indignans Deiphobus gladium ad eum strinxit ; at ille in aram Iouis Hercei insiluit ; quod cum Cassandra uaticinaretur eum fratrem esse. Priamus eum agnouit regiaque recepit.

ラーオメドーンせがれプリアモス(トロイア王)は、キッセウスまたはデュマースの娘ヘカベーと結婚して多数の子供を得ていたが、その妻が妊娠したとき、夢に燃える松明たいまつが現れ、その松明から多くの蛇が出てくるのをみた。 この夢をあらゆる占い師に語ると、彼らは、これが祖国の滅亡になってはいけないので、生まれるものは何であれ殺すよう指示した。

ヘカベーアレクサンドロスを生んだあと、アレクサンドロスは、殺すようにと従者らに委ねられたが、彼らは憐憫れんびんの情に駆られこの子を捨て子にした。 牧人らが棄てられた彼を発見し、自分の子供として育て、これをパリスと名づけた。

思春期に達したころ、彼は一頭の牡牛をかわいがっていた。 プリアモスに送り出された家来たちが、パリスのために挙行される予定の追善競技大会で賞品となるべき牡牛を連れていくために、そこへやってきて、パリスの牡牛を曳いていこうとした。 パリスは彼らを追いかけ、どこへその牡牛を曳いていくのかと尋ねた。 彼らはアレクサンドロス追善競技大会で勝利を博した者に贈るために、これをプリアモスのもとへ曳いていくのだと説明した。

パリスは自分の牡牛がいとおしくて、競技に参加し、すべてに勝ち、自分の兄弟たちをもしのいだ。 デーイポボス(プリアモスの王子の一人)が彼に剣を振りかざした。 だがパリスヘルケイオスゼウスの祭壇にすべりこんだ。 そこでカサンドレー(プリアモスの王女、予言者)が、パリスは兄弟であると宣言したので、プリアモスは彼を認知し、王宮に迎え入れた。
(松田 治, 青山照男 訳)

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