練習 13.5
課題文
οὐκ ἔστιν οὐδὲν κτῆμα κάλλιον φίλου.
語彙
文中の語 | 見出語形 | 品詞 | 変化形 | 主な意味 |
οὐκ | οὐ | 否定辞 | この語は変化しない | ~ない |
ἔστιν | εἰμί | 動詞 | 三人称/単数/現在/直説法/能動態 | ~である |
οὐδέν | οὐδείς | 形容詞 | 中性/単数/主格 | 何も~ない |
κτῆμα | κτῆμα | 中性名詞 | 単数/主格 | 所有物, 財産 |
κάλλιον | καλλίων | 形容詞 | 中性/単数/主格 | よりκαλόςな |
φίλου | φίλος | 男性名詞 | 単数/属格 | 友人 |
脚注
οὐδέν(P.145, §192)はここではκτῆμαにかかる形容詞。
一般に、οὐ…οὐδείς…のように、οὐのあとにοὐの合成語が来ても、否定が強められるにすぎないが、οὐδείς…οὐ…のように、単純否定辞があとに来ると、2重否定=肯定となる。 このことはμήとその合成否定辞についても同様である。
出典と翻訳
不明。
メモ
καλλίωνがκαλόςの比較級(P.51, §70)であり、これが本課の学習内容。 また、脚注にもある通り、οὐ…οὐδέν…のパターンであるので、二重否定ではなくて「否定の強調」になっている。 ギリシア語は語順の自由度が高いが、否定辞単体…否定辞の合成語…なのか、否定辞の合成語…否定辞単体…なのかで意味が違ってくるので、この部分に関しては語順が大切になってくる。
φίλοςは本来形容詞だが、本課題文では男性名詞の「友人」として読む。 φίλουという属格形は、比較の対象の属格(P.51, §73.2)。
まとめると、「φίλοςよりもκαλόςなκτῆμαは決して何もありはしない(οὐ…οὐδέν…, 否定の強調)」、くらいが本課題文の文意と思われる。